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【SAO】シンガーソング・オンライン
異伝:自ら踏み外した崖へ 後編
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 思えばPoHとは長い付き合いだ。
 あいつはハーフポイント辺りから俺に目をつけていたものの、忙しくて会いに来れなかったみたいだ。顔見せをしてはついでとばかりに周囲に悪意をばらまいて犯罪プレイヤーを増やすだけ。流石のあいつもラフコフ殲滅戦の影響は大きかったらしい。
 ――ちなみに、俺も友達の誘いでその作戦に参加して、何人か殺したが。

 PoHの短剣は友切包丁(メイトチョッパー)といい、何でも魔剣レベルのレアドロップらしい。
 対して、俺の手に握られているのは中ほどから折れた剣。本当に折れているのではなく、そう言うデザインだ。これはPoHも知らなかったらしく、愉快そうで不快な笑みを一層深くした。

「What!?珍妙な武器持ってるなァ、レクルス!なかなか愉快だぜ!!」
「抜かしてろ。そして油断して転んで呻いてるうちに崖から転がり落ちて死んでくれると嬉しい」
「オイオイオイオイ!いくら俺がエンターテイナーだからってそこまでのServiceは出来ないなァ!」

 剣と剣が虚空で幾度となく衝突し、火花が散る。

 俺の剣は、ロスト・グローリーというレアドロップアイテムだ。短剣並の短さでありながら、分類は何故か片手剣。突きのスキルは半分以上が使用不能な代わりに、その性能だけは馬鹿みたいに高い。何でも設定上は折れた聖剣らしいが、どうやら友切包丁も先端のない形状なので似たような武器に分類されるようだ。
 友を断ち切る裏切りの剣と、失った栄光を未練がましく抱く剣。
 性能比べと洒落込むのもまた一興だ。

 ただひたすらに、前へ後ろへ時には横へと縦横無尽に奔る殺刃を躱しながら、全身全霊で攻めたてる。向こうは殺し慣れしているから引けば付け込まれるし、逆に突っ込み過ぎれば首を掻っ切られるだろう。
 首をそぎ落とすような鋭さのソードスキルを、その手首ごと斬り飛ばす勢いのソードスキルで受けとめ、何度も何度も剣戟とライトエフェクトが空間に撒き散らされる。削ぎ、斬り、薙ぎ、弾き、鞭のようにしならせた音速の刃が乱れ飛んでは相手を殺そうと暴れ狂った。

 まるでそこにあるのは刃の嵐。ギロチン台の下でタップダンスを踊るように、死と隣り合わせの狂った戦い。こういうイカレた戦いというのは楽しいな、と思う。死への恐怖はなく、ただ生きている実感だけが剣の衝突を通して伝わってくる。
 今更だが、やっぱり俺はどこかおかしいんだと納得した。死は生物が最も忌避すべき感情なのに、俺の心は微塵もそれを前に動揺しない。だからこそ、戦えている。

 ――と、複雑怪奇な読みあいの末、ひときわ大きくロスト・グローリ―が弾き飛ばされた。
 競り負けたことで、また俺のHPが削られる。

「What's Up?レクルゥス?そっちからケンカ売っておいて期待はずれな結果じ
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