異伝:自ら踏み外した崖へ 後編
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ねっ!」
「それは……まぁそうだけど」
怒ったように腰に手を当てて覗き込んできたユウキは、その返事を聞くと「よろしい!」とふんぞり返っていつもの笑みを浮かべた。初めて会った時はもう少し大人しい子だと思ってたんだけど、病気が治ってからはすっかり逞しくなったものだ。
「だから嫌な未来は変えちゃおう?せーの、未来はボクらの手のなかぁー!!」
「お、おう。……未来は僕らの手の中ー!!」
「じゃ、私も……みらいはぼくらのてのなかー♪」
「未来は僕らの手の中ーっ!……って、あんまり歌ったことないんだが」
始まりはいつも突然で、終わりはいずれの必然だ。
だからいずれ来る「その時」に後悔しない歌を歌おう。そう思うと、いつも結局同じ歌に辿り着くのは何故だろう。
(コーバッツのおっさんはこの歌を聞いた後、無茶をして死んだ。ひょっとしたらこの歌はいい歌じゃないのかもしれない。それでも、おっさんは俺がこれを歌うのを許してくれるか――?)
不意に、観客席に見覚えのある厳ついタンクの男がいて、それでいい、と呟いた気がした。
周囲は誰も気付いていない。目を擦って確認すると、その男は笑いながら薄れてゆき――やがて、見えなくなった。
(幽霊を信じてる訳じゃないが……許されたのかね)
俺は心の中でありがとう、と告げ、いつものように歌を歌った。
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