異伝:自ら踏み外した崖へ 後編
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ないか?」
ぼそっと聞こえた危ない呟きにレクルスが冷や汗を流している。俺とユウキは聞かなかったことにした。こんな時ばかり気が合うのは何故だ。
ところで、他のMCPはどうなったのだろう。
詳しくは聞いてないが、MCPの自我はプログラムエラーの蓄積によってほぼ全員崩壊したとユイちゃんは考えていた。アイナちゃんはエラー発生の源である「プレイヤーに干渉してはいけない」を逆手にとって「干渉する必要のないプレイヤーだけ見る」という荒業で生き残ったようだが、案外別にも生き残りがいるかもしれない。
まぁそれはさて置き、レクルスとアイナがここに来たのは、アイナが聞き覚えのある音楽と声が聞こえたので来たいと言い出したからだと言う。そこで俺は、アイナがあの時の少女であることに気付いたわけだ。
「………じゃあ、生命の碑の前で出会ったのはやっぱり君なんだな」
「レクルスも特別だったけど、貴方も結構特別だったから。リスクを承知で実体化して接触したの。おかげで何所に居ればいいのかはっきりした。ありがとう」
「アイナと一緒になるきっかけを作ってくれたって意味では俺の恩人でもあるんで、ありがとうございます」
アイナはふわりとした幸せそうな笑顔でお礼を言い、レクルスもまた少し恥ずかしげに軽く頭を下げる。下がった頭からアイナが放り出されたが、レクルスがきちんとキャッチした。互いに顔を見合わせた二人は、くすくす笑った。
やっぱり二人になると考え方が大きく変わるようで、最近は生きているのも悪くないと考えを変えたようだ。彼も彼で退屈な世界にそこそこ価値を見出しているようだし、アイナちゃんはアイナちゃんで今が一番幸せそうである。
が、それはあくまで結果論でしかない。
「現実世界だと自殺幇助じゃねえか……!あーもう、何であの時あの歌を歌ったかねぇ俺は!?」
「しかも助かっているとは、お兄ちゃん恐るべし!AIのメンタルヘルスケアまでこなすとは!」
「からかうな!俺はそういうのじゃないって言ってるだろ!?」
まぁ、この世界でのFlyingは下ではなくて上なので、二度とそういう事はないだろう。
歌に込められたメッセージを読み解くのはあくまで個人の自由でしかない。救われるも救われないもブルハの与り知ることではない。だから、客に与える影響を考えようなんて考えは傲慢でしかない。だが、それならばそれで――俺の思ったことを素直に伝えるだけだ。
「次の歌は命を大切する歌にしようかなぁ………って考えてたでしょお兄ちゃん?」
「……人の心を読むんじゃありません」
「だってお兄ちゃん分かりやすいんだもん。絶対コーバッツっていうおじさんの事思い出してるでしょ?責任感じるのはいいけど、今はその責任を分かち合うパートナーがいる事、わすれないでよ
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