異伝:自ら踏み外した崖へ 後編
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、空中である構えを取った。
それは――それなりに練習した投擲スキル。
「ええと、スキル名何だっけ?とらえずグルグル回るやつッ!!」
「はぁぁぁッ!?」
このロスト・グローリーは、どういう訳か投擲スキル対応武器だったのだ。実際に使うには馬鹿みたいに高い習得レベルが必要だが、まさかこの体勢から投擲スキルなどという悪あがきをしてくるとは思わなかったのかPoHは一瞬唖然とした。
高速回転しながら飛来する刃。しかし――
「Shit!!ツマンネぇ抵抗しやがって!!」
「あ」
不意打ちにも拘らずPoHはそれを辛うじて、神がかり的な反射速度で躱した。
つまり、無駄撃ちだ。俺の最後の攻撃は、どうせ命中した所で致死には至らない最後のあがきは、あっさりと躱されてしまった。
「……なんだ。本当にツマンネぇ結末だな。エンターテイナーとして3流以下だ」
「…………」
身体が重力に引かれ、崖の下へと落ちていく。今更方向転換が出来る筈もない。
俺の最後の一発芸も、避けられた。もう俺のやれることは、あいつの呆れ顔を見ている事だけだ。
――俺の、予想通りに。
カァン!キィン!と、PoHの背後で小さな金属音がした。
その瞬間――激戦の果てに待っていた呆気ない結末に嘆息していたPoHは、ほんの一瞬だけ油断してくれたようだ。その一瞬もまた、俺の求めていたものだった。
俺が最後に見た地上の光景は――
「ガッ……て、め、ぇ………」
――PoHの首を半ば断つように深々と突き刺さった、ロスト・グローリー。
俺の愛剣が、失われし栄光を取り戻すように悪魔の首に深々と喰らいついていた。
崖に落ちる、などという文字通りの自殺行為までして気を引かなければ、流石にPoHに避けられたろう。だからこそ敢えてやった。そのまま戦えば殺される。ただ投擲しただけでも殺される。殺されるくらいなら自ら死を選ぶ――と思わせるように、本気を見せて、俺という生餌に食らいつくように誘導した。
PoHの目が驚愕に見開かれ、表情が苦渋に塗れる。敏いあいつはもう何があったか悟ったようだ。
「それだよ、その顔が見たかった――」
「Fuckin' Shit……フィ、フィ−ルドオブジェクトの岩を使って、投剣を反射させやがった、な――?この俺を騙して、この俺の考えた技で………ッ!!」
オブジェクトを利用した反射攻撃は、元々PoHが「グリーンプレイヤーのまま他プレイヤーを攻撃する手段として考えた方法」の一つだ。壁に当てる事でプレイヤーの攻撃という判定を無効化し、システムに偶発的な攻撃だと誤認させる。自分の技術で自分の首が切られるとは、実に皮肉だ。
この後PoHが死ぬかどうかはあまり興味がない。ひょっとしたら
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