異伝:自ら踏み外した崖へ 後編
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ゃないか!?」
「さっきから言おうと思ってたが、人の名前を軽々しく呼ぶなよへっこきPoH太郎」
「その余裕……もう続かないんじゃないかァッ!?」
PoHは強かった。俺の全身全霊の攻めはPoHに届いたが、それを僅かに上回る勢いで俺のHPが削られていく。化物染みた反射神経と体術がダメージを絶妙に減らし、その差は時が経つにつれて如実になっていく。剣の耐久値はいくらでも持つが、この調子では勝てそうにない。
速度、不利。筋力、有利。技量――ほぼ互角、か?恐らく勝敗を別っているのは回避技能の差。
――死ぬな、やはり。
どうしたものか。PoHがガチンコで戦うと思えなかったのでもっと別のピンチを想像していたが、状況はシンプルだった。俺にはこれ以上隠し札などないし、ここで突然エクストラスキルに覚醒するなどという都合のいい展開は訪れないだろう。それでも戦い続けると言うのは、それはそれで「そそる」ものがある。生への実感が魂を充足させているのだ。
だからこの戦いの果てに敗北が待っていたとしても、それでいいと思っている。
あの何もない家へ戻るくらいなら、ここで華々しく散った方が俺にとっては上等な人生だ。
しかし、あのPoHのニヤけっ面を引っぺがさないまま負けるのだけは少々面白くない。
一計案じてみようか。無意識にニィっと頬が吊り上った。
「………やっぱ惜しいなぁ。この状況で笑ってるお前は、間違いなくレッドの素質があるんだが」
「俺も残念だ。誘ってきたのがお前じゃ無ければ面白おかしく肩を並べるのもアリだったんだが」
「Suck、ツマまらねぇ嘘はやめな、レクルス。お前は確かに攻略組の邪魔くらいはするだろうが、最後には道を譲るだろ。戦ってて何となく、てめぇはそういう奴だってわかったよ」
「理解があるようで何よりだ。嬉しいよPoH、お前と相容れないことが分かって貰えて」
「ハン……渇いてんだがそうでないんだか、お前はわかんねぇ奴だよ」
俺は、ロスト・グローリーを力強く握りしめた。
一対一ではまず役に立たないが、こいつにはもう一つ、面白い使い方がある。本当に隠し芸程度の代物なのだが、せっかくだし――賭けてみるか。
PoHが弾丸のような速度で踏み込んでくる。俺はそれを――全力で後方に跳躍することで避けた。
「は……??」
PoHは呆気にとられた。何故なら、その跳躍の放物線を予測するに――俺はこのままだと確実に、崖の下に落ちるのだから。崖に落ちれば、多分現実でも死ぬ。それはゲーム開始時にここを飛び下りていった奴らが身を持って教えてくれた。
そう、どうせ死ぬのなら、「それを利用しない手はない」ではないか。
「ラストプレゼントだ、PoH。お前の一番ガッカリする結末を用意した!」
俺は
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