吸血の関係
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
月の綺麗な夜は、お店の前で飛白と会うことが、たまにある。
やっぱり、ヴァンパイアだからか、飛白は月光浴が好きらしい。
今夜もとても綺麗な月夜で、飛白は静かに月を見ていた。
青白い月の光の中の飛白はどこか幻想的で、綺麗って言葉しっくりくる。
「こんばんは、飛白」
「やあ。ってその傷、どうしたんだい!?」
目を丸くする飛白の視線の方を見ると、いつの間にか指がスッパリと切れていた。
「ほんとだ、いつ切っちゃったのかな?」
怪我の治りが普通の人より早い私は、割とこういうことに対して無頓着な方で、
つい流れる血を服に付けないようにする方へ、気を回してしまう。
「はぁ‥‥‥そのくらいなら、消毒すれば大丈夫そうだね‥‥」
溜め息とともにそう言う飛白は、やれやれって感じ。
そりゃあたしかに、ここは山奥だから破傷風菌とかはちょっと怖いけど、
飛白だって、私の傷の治りの速さはよく知ってるはず。
夏にした花火の時の火傷の痕も、もう消えちゃったし、その‥‥噛み痕だって、
3日もしたらきれいに治ってるんだもん。‥‥‥これもたぶん明日には治ってる。
その事実は、人間としての規格から外れてて、なのに普通であろうと振舞ってしまう。
そんな自分が、実はあまり好きじゃない。というか、嫌いだ。
このお店じゃ、わざとらしく振舞わなくても、私は十分人間で、だから安心する。
なんて、ぽたぽた血の流れる指を見てたら、ふと思いついて、
「流れちゃうの、勿体ないから、血、あげる」
そう言って指を差し出してみる。
あの日の、血を支払った時の、飛白の姿を思い出してしまったから。
言っちゃってから、不味いからいらない。って言われたらって思うと、すごく怖くなって、
顔を伏せてしまった。胸の奥で鳴ってる心臓の音しか聞こえないような静寂。
ぽたりと指から血が、地面に……落ちる。
いくら待っても、飛白は動かない。
初めて、私の血を見たときは、あんなに強引だったのに……
今は、微動だにしてくれない。
喉の奥が引き攣れて、息が苦しい。胸が痛い。でも、手は下げることができない。
指から、また血の雫が、無意味に地面へ落ちる。
「僕は……」
あの時と同じ掠れた声音で
「僕は、もう君から…血を、貰うのを……やめたい………」
その言葉に、力を失った腕が手を下げてしまった。
胸が痛い。息が出来ない。全身の肌が悪寒で粟立つ。膝も震える。
「ど、して……?」
それだけ問うのが精一杯だった。その答えがどんなのでも。
聞かなきゃ絶対諦められない。うなずけない。
寒くもないはずなのに、悪寒が止まらない体を、震える膝でなんとか支える。
「君から…血を貰う限り…僕は…捕食者で、在り続ける…
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ