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Impossible Dish
第三食
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ろです。……失礼ですが通してもらっても良いでしょうか?」
「え、えぇ」

 言われるがままに入り口から退き、なおとは失礼しますと断りながら横切り厨房の中に入り、清潔に保たれている調理台の傍にダンボールをゆっくり下ろした。そこから持ってきた食材を調理台の上に並べていく。

「君、何やってるの?」
「料理の勉強です」

 えりなの漠然とした問になおとは即答しながら、手際よく冷蔵庫の中に食材を入れている。流石のえりなでも、ここで「どうして君が食材を運んでいるの?」とは聞けなかった。返ってくる答えは「僕しか運ぶ人がいないから」に決まっていた。

 それっきり黙りこむえりなの目の前でなおとは参考書が積みあがっている調理台に寄り、そこから二冊取り出してノートが広げられている調理台へ。そこから先は黙々とノートに書き込むだけになってしまった。
 なおとの調理実習を覗きに来たのに自習を始めてしまったので私室に戻ろうかとも思ったが、部屋に充満している紙に少し興味が沸いたので、厨房の中にもう一つ椅子があるのを良い事に勝手に居座ることにした。咎める声が無いから問題ないのだろう。
 
 なるべく音を立てないように部屋の中を巡回する。壁に貼られている紙には自分に言い聞かせるかのような文句、調理にあたっての心がけ、苦手らしき調理方法の手順や注意点と多岐に渡る。大体が参考書に書かれていそうな文句ばかりだったが、それらに混じって自分が見つけた注意点などもあるので真剣に料理と向き合っているのが見て取れる。
 高く積み上げられた紙束には参考書に載せられている調理手順などを模写したものや、問題を解いたらしき形跡、調理中に走り書きしたのか油が数滴染込んだ紙と、こちらも熱意の塊だった。文字の一つ一つに確固たる決意が感じられ、読み手に訴えかけているようだ。

 それら一つ一つに目を通していると良い時間が過ぎたのか、なおとがペンを机に置いた音でえりなも顔を上げた。

「あれ、えりな様いらしたのですか」
「気づいてなかったのね……」

 お邪魔しますの一言くらい言うべきだったものの、えりなの存在そのものに気づかないほど集中していたなおともどうなのだろう。集中できるというのは美徳だが、今のように周りが見えないほど極端なものだったら考え物だ。

「えっと、お茶を出しますね」
「結構よ。私に構わず、いつものように振舞いなさい」

 我ながら傲慢な態度だと思うものの、なおとにとってこれが最も接しやすい態度なのだろう。ここで変に親しくされても、えりなを目上の人だと徹底的に教育されているなおとにとって困惑するだけ。
 椅子にふんぞり返って待っていると、なおともえりなに言われた通り日課の調理実習に移った。

 その手つきはなるほど生き甲斐と自称するだけあって形にな
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