葛藤
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てまぁまぁだと認めてもらえるようになった。
「ならぜひ僕と合わせてみてほしいね」
「まだ、ふふんって鼻で笑われてるから‥‥」
「彼はいつも、自分が1番だと思ってるからね」
飛白は楽しげに笑ってそう答える。
そのとおりなんだけど、私としてはぎゃふんと言わせてみたい。
昔の人だから「ぎゃふん」ってホントに言いそうなんだもん‥‥
言わせられたら、ぜったい気分爽快なはずだよね。
「ふふっ、かならずモツァルトをぎゃふんと言わせるんだ」
「それは楽しみだね。その時はぜひお相手してください」
「うん、約束ね」
バッハ先生に睨まれて縮こまってた心がすっかりほぐれたところで、
ふと、思い出した。そういえば今日は土曜日だ。
別にちゃんと決めたわけじゃないんだけど、
飛白に血を支払う日を、私は勝手になんとなく土曜日にしてるのだ。
体調とか悪くしたことはないんだけど、いちおう、お休みの前の日だし‥‥
「ぁのっ。…今日、支払い…したい…」
これを言うのはいつも緊張する。
吸血鬼にわざわざ血を吸われたいなんて、ちょっと間抜けな気がして、
恥ずかしかったりもするんだけど、
できれば……その、いつも、飛白には…元気で、いて…欲しい、から。
熱くなる頬をなるべく見せないようにしてると、
「……あ、ああ…………」
飛白からの短い返事が返ってくる。 …――ここのところ、飛白は少し変だ――…
前は喜んで私から血を吸ってたのに、そういう反応はしなくなった。
血の味が変わるようなことはしてないつもりなんだけど、
味が変わって、美味しくなくなったのかなって、考えてしまうくらいに。
洋服の首元を緩め、髪の毛をかき上げて、首筋をさらす。
そっと近づいてくる飛白の顔に、初めての時とは違う、
きゅうっと苦しくなるようなドキドキを感じるようになったのは好きだと自覚してから。
飛白が私に触れるんだって思うと、それだけで嬉しい。
「……んっ…………」
尖った牙が首筋に突き刺さる時も、痛いけど嫌じゃない。
普段は見た目と同じように少しひんやりしてる飛白の、
肩を掴む手や頬が、私の血を嚥下する度に熱を孕んでゆく。
その変化に心が震えてしまう自分が、少し後ろめたい。
唇が離れて、傷口から流れる血で洋服を汚さないようにと、
首筋を優しく舐め上げられると、
体がどうしても震えて、甘えた声が漏れてしまうのが、恥ずかしい。
飛白のことだけで心がいっぱいになってしまう。
何も考えられなくなりそうで怖いから、きゅっと手に力を込める。
飛白がゆっくりと離れていくまで、
そうしていつも、じっと動かないようにしている。
でも、今日はいつもと違った。
いつもは血が止まったら
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