3部分:第三章
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第三章
「神のお導きです」
「神のですか」
「私は神のお言葉に従い村を出ました」
そうして王にその秘密を告げ彼の信頼を得てだ。軍を率いフランスの為に戦った。フランスにとってはまさに救世主であるのだ。
「そうして今はこうして」
「それもまた、ですか」
「私はそう考えます」
「私は違います」
僧侶はだ。ジャンヌの言葉を否定してきた。そのうえで彼はこう言うのであった。
「私はイングランドともフランスとも縁がありません」
「そうなのですか」
「神聖ローマに生まれました」
フランスの東にある大国だ。欧州随一の国でもある。
「ですから。その分だけ離れて見られますが」
「それでどうだというのでしょうか」
「貴女は間違っても異端ではありません」
彼は断言した。そうであるとだ。
「魔女でもありません」
「そう仰ってくれるのですね」
「はい、イングランドは間違っています」
こう彼女に話した。
「貴女を見捨てたフランス王もです」
「そうだというのですね」
「そうです。貴女は紛れもなく聖女です」
彼はまた断言した。
「その貴女が。何故」
「ですからこれもまた神のお考えによってです」
「神ですか」
僧侶の言葉がだ。悲しいものになった。
「貴女はその神によって魔女にされるのですよ」
「そう。今は告げられました」
「今はですか」
「ですが。貴女もわかっておられますね」
僧侶に顔を向けてだ。ジャンヌは話すのだった。
「私は魔女ではないと」
「はい、それは」
「そうです。私は魔女ではありません」
彼女が今言うのはこのことだった。
「決して。ですから」
「いいのですか」
「神もそれは御承知です。ですから」
「そうですか。それでは」
「明日。私は召されます」
微笑んでだ。僧侶に話した。
「神の下に」
「その神が貴女を異端にしてもですね」
「先程申し上げた通りです」
そうだというのだった。
「ですから」
「左様ですか」
「はい、それでは」
これで話を終わらせてだった。そうしてだ。
その日が来た。時の流れは無慈悲だ。ジャンヌは火刑台に引き立てられていく。そしてそこにくくりつけられてであった。そうして。
火が点けられる。炎が忽ちのうちに彼女を覆っていく。
多くの者がその有様を見ていた。殆どがイングランドの者だ。
彼等はだ。ジャンヌが焼かれようとしているのを見て安堵したような顔で言うのであった。
「これでいいな」
「ああ、これでフランスの勢いを削げる」
「オルレアンの魔女さえいなければ」
「この戦いは我等のものだ」
「勢いを取り返せる」
彼等はこう考えていた。しかしだ。
あの神聖ローマ帝国の僧侶もいた。彼はこう言うのであった。
「違う
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