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魔法少女リリカルなのは〜過ちを犯した男の物語〜
番外編:Birthday Of Victor
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ガーが家に帰ってくるとラルがぼんやりとした目で大量の料理を作っていた。
 その様子にルドガーは震える声でラルに問いかける。

「ラル……今日は何かあったか?」
「ふふ、とぼけているの、あなた。今日は―――お義兄さんの誕生日でしょ?」

 彼女は焦点の合っていない目でルドガーを見つめながらそう答える。
 ルドガーは思わず、後悔と絶望から泣きそうになるが、すぐに彼女を黙って抱きしめる。
 自分のせいで―――何度も何度も過去を繰り返し続ける事しか出来なくなった彼女を。


「お義兄さんの大好物のトマト料理をたくさん作ってみたんだけど、気に入ってくれるかしら?」
「ああ……きっと……兄さんなら気に入ってくれるさ…っ!」


 自分のせいで当たり前の幸せが壊れてしまったと一体どれだけルドガーが自分を責めているのかは分からない。
 ただ、分かることは、彼はどんなに彼女が狂ってしまっても彼女を愛し続けているという事だった。
 ……例え、その記憶が摩耗していこうと。
 そして、さらに病が進行してやせ細りもはやベッドから起き上がることも出来なくなったラルに一歳か二歳のエルが元気に話しかけている。


「マーマ、おはよーっ!」
「……あら、可愛い子……お名前は何て言うの?」
「マーマ?」
「エル! ……ママはお病気だからあんまり騒いだらダメだろう。エルの大好きなスープが出来ているから先にリビングに行っていなさい」
「はーい♪」

 トテトテと可愛らしく歩いて消えるエルの背中をルドガーは罪悪感に押しつぶされそうになりながら見つめ、そして自分の方すら見つめてくれなくなったラルの手を優しく握る。

「エルって言うのね、あの子……可愛い名前。女の子の名前候補に入れてみようかしら、ねえ、あなた」
「……そうだね」

 今にも泣き崩れてしまいそうになりながらルドガーは答える。
 彼女はもはや愛する娘の事すら思い出すことが出来ないのだ。
 そして、彼女が話しかけている夫も今目の前にいる彼ではなく記憶の中にいるルドガーだった。
 それでも彼は彼女が生きていてくれさえすれば良かった。とにかく生きて自分の傍にいてさえくれれば、それでよかった……それで良かったのにもかかわらず―――

「ねえ、あなた……」
「ラル……俺の事が分かるのかい?」
「ええ……ずっと夢を見ていたみたい……自分が自分じゃ、なくなっちゃうみたいで怖いの……」
「ごめん……ごめん……」

 ほんの少しの時間だけ正気に戻ったラルにルドガーは顔を上げる事も出来ずに謝り続ける。
 もう、ラルに残された時間は殆どないのだろう。
 最後の最後に正気が戻った、そう感じずにはいられなかった。

「ねえ、ルドガー……お願いがあるの」
「何だい? 何でも言
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