番外編:Birthday Of Victor
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っ!」
絶叫して兄の遺骸を抱きかかえた状態で涙を流し続ける彼の姿はなぜか酷く美しかった。
しばらくそのまま状態で動くことのできなかったルドガーだったが、やがて聞こえてきた大勢の足音に反応し、立ち上がる。
最後の大仕事が残っているのだ。
ルドガーは優しく兄の遺骸を横たえて大勢のエージェントを率いたビズリーを睨みつける。
「ビズリー……エルとラルの元には行かないのか?」
「この期に及んで野暮なことはせん。クルスニクの父親として成すべきことを成すまでだ」
「兄と弟が……父と子が殺し合う。それがクルスニク一族だったな。俺はあんたのことを父として愛しているよ」
両者は共に時計を構える。
ルドガーは自分の時計とユリウスの時計を、ビズリーは黄金の時計を構える。
そして二人共、最恐のフル骸殻となりぶつかり合う。
「俺は……俺の世界を創るっ!」
そして死闘の末にルドガーは骸殻を半壊させながらも全ての敵を殺すことに成功した。
しかし、世界はどこまでも彼に対して残酷であった。
すぐに絶望が彼の元に襲い掛かってくる。
「はぁ…はぁ……これで、俺は幸せに―――ぐっ! がぁぁあああっ!?」
自分の顔の右半分を抑えてのたうち回るルドガー。
骸殻の使い過ぎにより時歪の因子化タイムファクターかが限度を超えて進行してしまったのだ。
もはや、どうしようもないレベルの浸食は彼の寿命を大きく削り取ることになるだろう。
だが、それでも彼は最愛の妻と娘と暮らせれば、二人が自分の分まで生きられるならそれでいいと思っていた。
それ程に小さな幸せを祈っていた。しかし―――
「あ、ああ……どうして、あなた……」
「ラル! ……君とエルを守る為にはこうするしかなかったんだ」
今まで危ないからという理由で隠れさせていたラルが、ルドガーが兄と父、そして仲間達を皆殺しにした現場に来てしまったのだ。
ラルはエルを抱いたままの状態でヘタリと座り込んでしまい。
怯えた目でルドガーを見つめる、そんなラルに彼は安心させるために笑みを浮かべて近づこうとするが。
「私が…私が…ちゃんとエルを産んであげられなかったせいで……あああっ!」
「ラル? そんなことはないよ、君はちゃんと―――」
「いや! いやっ! いやぁぁぁあああっ!!」
自分のせいだと思い、悲鳴を上げるラルをルドガーは抱きしめてやる事しか出来なかった。
この時から、ラルは精神を病み、病の床に伏せることになる。
全てはルドガーがラルとエルを守る為に兄と父、そして仲間達を皆殺しにしてしまったがために。
彼の行動と選択は全て裏目に出る結果になってしまったのだ。
あの事件からしばらくたったある日、ルド
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