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第一章
炎の天使
フランス軍の中でだ。無念に満ちた声が響いていた。
「何故だ」
「何故あの方が処刑される」
「魔女だと?」
「そんな筈がない」
こう言ってだ。誰もがそれを否定する。
「あの方はフランスを救われた」
「オルレアンはあの方なくして解放されなかった」
「それまで我々はずっと負けていたのだぞ」
「しかしそれが一変した」
「あの方のお陰だ」
こうだ。口々に言うのであった。
「どうしてそれで魔女なのだ」
「異端だと?そんな筈がない」
「異端とはカタリ派ではないのか」
「あの方は違うぞ」
そしてだ。黒、いや青を思わせる見事な髭を蓄えた長身の逞しい男もだ、兵士達の話を聞きだ。その彼等にこう言うのであった。
「御前達もそう思うな」
「あっ、将軍」
「失礼しました」
「いや、いい」
噂話は軍隊にとっては忌むべきものだ。しかし彼はそれをいいとしたのであった。そのうえで彼もまたこう言うのであった。
「私も同じだ」
「将軍もですか」
「そう思われていますか」
「あの方が異端だと」
そのことにだ。忌々しげに語る。端整な、それこそ女性ならば誰もが魅了されずにはいられない顔に怒りを篭らせて語るのだった。
「そんな筈がない」
「全くです」
「イングランドの謀略だ」
彼は吐き捨てるようにして言った。
「それが何故ああして」
「あの方を貶め」
「そのうえで」
「救い出せないのか」
彼は真剣にこのことを考えていた。
「どうにかして」
「そうですね。イングランドまで向かい」
「そのうえで」
「できる筈もないな」
それは彼もわかっていた。
「我々はパリすら解放していないのだからな」
「その状況ではですね」
「とても」
「私は断言する」
彼は言うのだった。
「このジル=ド=レイの名にかけてだ」
「あの方は異端ではないとですね」
「ましてや魔女などとは」
「あの方は聖女だ」
それだというのである。
「神に誓って言える」
「神にですね」
「まさしく」
「そうだ。あの方は紛れもなく聖女だ」
レイの言葉は続く。彼はそう確信していた。だからこそだ。
「それがどうしてだ」
「ジャンヌ様はどうなるのでしょうか」
「それで」
「忌々しい話だが」
こう前置きしてからだ。レイは離した。
「やはりな。最早」
「火刑ですか」
「そうなるのですか」
「異端、魔女ともなればだ」
どうなるかは欧州では常識だった。火刑しかなかった。
「そうなってしまう」
「左様ですか」
「だからこそですね」
「あの方は火刑に処せられる」
「そうなりますか」
「イングランドの奴等のせいでだ」
レイはまた言っ
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