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鎧虫戦記-バグレイダース-
第37話 響き渡る静寂の音
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やっと倒したんだぞ!!
 死ぬんじゃねぇよ!ジェーン!!」

ホークアイは俺にそう叫んでいるようだ。
だが、そんな事を言われると余計に死にたくなる。
腹部の激痛に重度の呼吸困難。
視界は涙で歪んでいて、おまけに少し暗い。
こんなことなら、もうこのまま目をつぶって
永遠の眠りにつきたいくらいだった。
そう思っていた時だった。

 ギュッ!!

「‥‥‥‥‥‥‥え‥‥‥?」

俺は驚いた。ホークアイが俺を抱きしめたのだ。
それは、とても力強くて、それでいて優しかった。
ホークアイの体温を直に感じられるこの状態は
彼に背負われていることを思い出させ
全ての苦しみを忘れさせた。

「頼む‥‥‥ッ‥‥‥お前が死んだら‥‥‥‥オレは‥‥‥‥」

ホークアイは涙を流していた。
顔は横より向こうにあって俺は直接見えないが
彼の声は明らかに悲しみに染まっていたからだ。

「‥‥‥‥‥何‥‥‥泣いてん‥‥‥‥だよ‥‥‥‥」

俺はそんなコイツに言ってやった。

「泣くん‥‥‥‥‥じゃねぇよ‥‥‥‥男‥‥‥だろ‥‥‥‥」

ホークアイは身体を少し離した。
そして、俺と顔を合わせた。

「‥‥‥‥‥‥‥お前って」

俺はホークアイの頬に手を添えた。
そこは濡れていて、今なお溢れている涙が
俺の手をゆっくりと伝っていた。
だが、全く不快な気分にはならなかった

「結構‥‥‥カッコ良かったんだな‥‥‥‥‥‥‥」

俺は彼に向かってそう言いながら微笑んだ。
上手く笑えているのだろうか。正直、自信はない。
だが、久しぶりに心から笑うことが出来た。
マリーもいつもこんな感じで笑っているのだろうか。
だとしたら、俺にはそれを毎日見せるのは
難しいのかもしれないな。コイツに対して
本当の顔を見せれるのは、今ぐらいだから。

「‥‥‥‥‥ジェーン‥‥‥‥」

ホークアイの顔は安堵の表情に包まれていた。
それを見届けた俺はゆっくりと目を閉じた。
力なく腕が硬い岩盤の上に音を立てて落ちた。

「‥‥‥‥嘘だろ‥‥‥‥なぁ‥‥‥オイ‥‥‥‥」

ホークアイはそう言いながら俺を揺すった。
しかし、俺は目を開ける事も、反応する事もなかった。
俺の口から、ゆっくりと血が伝って行くだけだった。

「う‥‥‥‥あぁ‥‥‥‥‥‥‥‥」

ホークアイの目から溢れている涙が
俺の頬にポタポタと落ちて、流れて行った。

「あああぁぁあああああああああぁぁぁぁぁあああああああああッッ!!!!」

ホークアイは俺を抱き上げたまま
身体を反らして、悲痛な叫び声を上げた。
それは、暗く閉じられたこの空間に響き渡って行った。
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