第37話 響き渡る静寂の音
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そうとしているのか、どちらでもいい。
少なくともホークアイがすぐに殺される事は無くなった。
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥よし』
俺はもう一度息を吸って超音波を発しようとした。
しかし、喉の奥から上がってくる何かがそれを邪魔した。
「うぐ‥‥‥‥ゲホッ‥‥‥」
俺は口を押さえて咳をした。
その手を離してみると、掌に少し血が付いていた。
"超技術"で音波を発する際は、声を出すために
腹筋を中心に全身に力を込めなければならない。
内臓がまだ治ってない状態で全身に力を込め続けているのだから
そのうちガタがくるとは思っていたが、まさかこんなに早いとは。
「‥‥ハァ‥‥‥‥ハァ‥‥‥‥」
最近、やけに再生の速度が遅くなっている。
一週間前に木の皮にひっけかて手にケガをしたが
それが治るのに十分以上もかかっていた。
本来なら数十秒あれば傷が塞がっていき
一分あれば表皮まで完全に再生できるはずなのにである。
(通常の人間に比べればそれでも十分早いほうなのだが)
ズシンッ ズシンッ
"鎧虫"がいつの間にか随分近くに来ていた。
固有振動数に近い音に見当が付いてはいるが
それを一致させるための時間が数十秒ほど欲しかった。
弱っている俺の声では、コイツを倒すためには
固有振動数と完全に一致させないと、まだ威力不足だからである。
「‥‥‥ハァ‥‥‥ハァ‥‥‥‥ゴホッ」
しかし、もう間に合わないだろう。
上にいるみんなに期待したいところだが
それも間に合いそうにない。
「‥‥‥‥ギギッ‥‥‥ギィィ!」
"鎧虫"が先の鋭くとがった右足を振り上げた。
それを見た後に俺は目をゆっくりと閉じた。
『じゃあな‥‥‥‥ホークアイ』
俺は覚悟を決めて心の中でそうつぶやいた。
ドンッ!!
突然の一発の銃声に俺は再び目を開けた。
ズウゥゥゥゥンッ!!
そこでは"鎧虫"が足を振り下ろすよりも先に
銃声の鳴った方向に音を立てて倒れこんでいた。
衝撃で舞い上がった砂煙の向こうから
ゆっくりと歩いて来ている影がつぶやいた。
「‥‥‥‥‥俺だってやりゃあ出来るんだよ」
煙が晴れると、ホークアイがフラフラと
今にも倒れそうなほど足取りでこちらに歩いて来ていた。
彼に放った一発でついに右側の"増殖器官"の一つが機能を停止し
右側を支える力が低下したので、左の力が大きくなり
右に倒れ込んでしまったのだろう。
「ま、今のは運が良かっただけだけどな」
実際にあの一発で"増殖器官"が壊せてなかったら
俺はあの尖った足に串刺しにされていただろう。
本当に運が良かった。
「痛ッ!‥‥‥‥‥ふぅ‥‥‥」
ホークアイ
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