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ソードアート・オンライン 瑠璃色を持つ者たち
第九話 従兄妹
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れるのが。

もはや《ビーター》という孤独感に苛まれていたキリトに、この暖かすぎるアットホームな彼らの雰囲気は麻薬のようなものだった。

自分より格下の存在、憧れられる存在という優越感。弱者を守る騎士という力を持つものが故の快感。

一度知ってしまえば忘れることは出来ず、捨て去ることすら不可能。確かに、麻薬とは言い得て妙だ。

だから彼は刹那の迷いの後、彼らの平均レベルより三つ上ーーーそして自身の真のレベルの二十も下のレベルを口にした。

《月夜の黒猫団》のメンバーは、その実力でソロなんて、とキリトの言を信じ口々に称賛しキリトは苦笑せざるを得なかったが、嘘をついている罪悪感より、ただ一人そのレベルが偽りであると知っているプレイヤーの表情が気になって仕方なかった。

ハイペースで野菜や肉や魚をバキュームのように胃袋へ放り込んでいくリュウヤは何も言わず、だが笑みだけを送った。

キリトはそれを嘲笑だと受け取り、思わず視線を外した。けれど、それは早とちりだった。

「そいつは《攻略組》の俺が鍛えてやったからな。レベルは置いといて、戦闘技術だけは一人前だぜ」

さっきまで食事に集中し話には入ってこなかったリュウヤが、自然なタイミングで会話に入り込み、加えてキリトの偽りの立場を援助したのだ。

「そうなんだーーーって、リュウヤってあの《攻略組》だったの!?」

「おうよ。そのうわさを聞きつけたキリトがな、僕に剣術を教えてください! なんて頼んで来たもんだから、一応俺の弟子ってことになんのかね?」

「そっかぁ。すごいねキリト、攻略組の人の弟子だなんて」

「あ、うん……そんな大したことないけどな」

「ほんじゃちょっくら面白い話してやるよ。こいつが弟子入りしてきて三日たったくらいにな、先生もう無理です動けません〜、とか言い出しやがったもんだからーーー」

そこから披露した『師匠と弟子の裏話』に《月夜の黒猫団》一同は笑ったり、褒めたり、同情したりとリュウヤの話に夢中になっていった。

それだけでもリュウヤの語彙力と表現力はすごいと感じるが、加えてそのどれもが、“嘘”ではないのだ。

確かにキリトは槍を持つエネミーの対処法を学ぶためにリュウヤに何度か手解きしてもらったことはある。

その時の鬼畜っぷりと言えばなかったがーーーそれはどうでもよく、絶対に嘘はつかずにキリトの偽りを真実として信じさせるために口を動かすリュウヤに、キリトの頭の中は疑問符でいっぱいだった。

けれどさっきのリュウヤの言葉を聞いた今なら分かる。彼は分かっていたのだ、キリトがビーターと呼ばれることが、苦を通りこして痛みになっているのを。

それを察して、この少数ギルドの内輪にただの《キリト》としての席を作ってくれたのだ
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