八話:バイトと日常
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
すか」
ジークだとっ!? ヴィクターのセリフに浮気現場が見つかった夫のようにあたふたとしているとジークが物陰から頬を染めながら顔を覗かせる。
俺が密かにジークの写真を集めているのがバレてしまったじゃないか。
まさか、さっきの視線の正体はこいつか!?
「リ、リヒターが欲しいんならいくらでもええよ。私もリヒターの執事服姿を撮らせてもろーたし」
両手の人差し指をツンツンと突きながら上目遣いで言ってくるジークに言葉が出ない。
くそっ! こういうのは当人が知らないところで集めて切り札として扱うのが楽しいというのに……何たる失態だ!
それと、撮影料を寄越せ。
「等価交換ということですわね」
「リヒター・ノーマン、人生最大の屈辱だ…っ!」
「この程度の事で何を言っているのですか」
ヴィクターが優雅に紅茶をすすりながらツッコんでくる。
どうやら俺には味方は居ないらしい。
その事に悲しくなった俺は恥ずかしさもあり無言のダッシュでその場を後にする。
「リヒターの執事服……ええなぁ、えへへ」
何か聞こえて来たが気にしない。
リヒターが走り去った後、ジークはニヤケきっていた顔を引き締める。
自分の恥ずかしい写真を見られるのは勿論恥ずかしいがそれをこっそりと集めようとしていたのが自分の想い人なら話は別だ。
いつもは邪険に扱われるがこうしたふとした瞬間にデレというか、優しさを見せる彼に出会えたのは彼女の人生において何よりも重要なことだ。
そして、彼女は今回のインターミドルであることを決心していた。
「ヴィクター……私、今年は絶対に負けんよ」
「望むところですわ。……と、言いたい所だけど、どうしたの急に?」
「私は決めたんよ。今回のインターミドルで優勝したら―――」
ジークはそこで一端言葉を切り、彼からプレゼントされた青色のリボンを愛おしげに触れる。
そんな様子にヴィクターは娘の青春を見守るような母親の顔になる。
ジークは表情を凛とした物に変え言葉を紡ぐ。
「リヒターに―――こ、告白する!」
恋する乙女の戦いが今―――始まる。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ