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第一章
儒家の武
孔子がいた。彼は祖国魯では政治家でもあった。
政治家としての才覚も確かなもので豊かな学識や厳格で几帳面な性格もありだ。魯の国を見事に治めてもみせたのである。
人を見る目も確かで適材適所に人を置いた。しかしであった。
政治家という仕事は敵が多くなるものだ。所謂政敵である。有能であればあるだけ出世を妬む者が出るし改革を進めれば既得権益を脅かされる者達が憎む。現状維持であれば改革を望む者達が不平を抱く。とかく何をしても敵を作ってしまう仕事だ。
これはこの時代も同じである。そしてだった。
孔子もまた多くの敵を抱えていた。魯の至るところにである。
その中の一人がだ。密室で部下達とこう話していた。
「このままではな」
「そうですな。孔丘めにです」
「地位を脅かされますな」
「そうなりますな」
こう話す彼等だった。孔丘とか孔子の本名である。
「ではここは」
「公に言ってそれで」
「奴を動けなくしますか」
「そうされますか」
「できるものか」
中心にいる者がそれを否定したのだった。
「讒言してもだ」
「はい」
「効果がありますが」
「孔丘が公に話して弁明して終わりぞ」
「そうでしたな。あの男弁も立ちます」
「見事なものです」
伊達に学者ではなかった。彼は弁も立つ。それも見事なまでにだ。
「それによって公への讒言もですか」
「打ち消されてしまう」
「そうなってしまうと」
「そうだ、だからそれは意味がない」
そうだというのだった。
「おまけに奴の仕事を改竄してもだ」
「あの男、確かめるのも念入りですし」
「しかも多くの弟子達が常にその仕事を手伝っています」
「それでは工作をしても」
「それもなのですね」
「すぐに防がれる。それも無理だ」
これもだというのだった。
「だからだ。ここはだ」
「はい、それでも孔丘は何とかしなければなりません」
「さもないと我等は本当にです」
「何もかも失います」
「どうにかしないと」
「既に考えてある」
中心の男が言った。暗い密室の中に車座になって座っているがだ。彼のその姿や言葉がまさに場の中心となっているのである。
「それはだ」
「といいますと一体」
「何をされますか」
「まさか」
「そのまさかだ」
こう言う男だった。
「刺客だ。それを送る」
「殺してですか」
「あの男ごと消してそれで」
「全てを終わらせる」
「そうされるのですね」
「そうだ、そうする」
こう話してだった。彼は決めたのだった。
「あの男は所詮儒者だ」
「武芸はできませんな」
「確かに弁は立ちいざという時のはったりもある」
「それでも。儒者でしかありませんな
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