ターン29 鉄砲水と『D』
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ボールが生まれた。それを持ったままこちらに突進してきて、ラブカの頭上高くにジャンプしてから僕に向けて叩き付ける。
「ダンクガイは手札からディーヒーローを1体捨てることで、相手プレイヤーに直接500のダメージを与えることができる。そして僕はこのエフェクトで、手札のディパーテッドガイを捨てる!」
「これは……」
清明 LP350→0
「まったく、てんで話にならないね。その程度の実力で、むしろよくこのジェネックスを生き延びてこれたものだ」
何も言い返せない。僕は負けた。それも見事なまでの完敗だ。唯一与えることができたオイスターマイスターの攻撃さえも、ダブルガイ・トークンを生み出すための罠として掌の上で踊らされていただけにすぎない。
「だいたい、本来ならばひとつ前のターンで攻撃力1000のディパーテッドガイを通常召喚していればドグマガイと合わせての攻撃でもっと早く勝負はついていたんだ。十代のようなドロー力でも見せてくれるのかと思ってわざわざ1ターン待ってやったというのに、できたことがあんなつまらない手での延命とはな」
「………」
「最後に1つだけ忠告しておこう。お前じゃ足手まといにしかならないから、斎王に正面切って刃向うのはやめておくことだな」
それだけ言って、今度こそ歩き去っていくエド。最後の一言は、彼なりの優しさのつもりなんだろう。この間タッグデュエルした時から思ってたけど、案外エドも最初のころの印象より悪い奴ではないのかもしれない。
だけど、その一言は僕にとっちゃ完全に逆効果だ。こんなところで立ち止まっていたら、何も取り戻せない。手放したくないものがあるなら、自分で掴み取ればいい。それができないと、それは自分のせいではないと自分に言い聞かせながら生きていくことになる………エドがあの時僕に向かって、そしておそらく自分に向けても言った言葉だ。そんな人生を送るのは、少なくとも僕はまっぴらごめんだ。年下相手に人生を教わるのも癪だけど、言ってることが正しいのなら反発することもない。確かに今はまだ僕も力不足だけど、これからもっともっと強くなる。なってみせようじゃないの。エドへのリターンマッチはその後でいい。
だけどとりあえず、今できることは自分の負けに対しけじめを示すことだろう。ポケットから僕が最初にもらったのとフランツから奪ったジェネックスのメダルを引っ張り出して、エドの後姿に投げつける。あ、くそ、当たんなかった。もうちょいしっかり頭狙って投げればよかった。
「覚えてなよ、次は勝つからね!」
何も言わないエド。だけど、ほんのわずかに彼が笑ったような気がした。
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