1部分:第一章
[2/2]
[9]前 最初 [2]次話
。屋敷で武芸に励む彼のところに部下が来た。そして告げるのだった。
「それはまことか」
「はい」
部下は彼の前に片膝を付き述べるのだった。
「この目でしかと見ました」
「ふむ」
伍子胥は剣を振るう手を止めていた。そのうえで考え込んでいた。
「今はそうだとは言えぬな」
「ではどうされますか?」
「今そこにおるのだな」
そう部下に問うた。
「そこに」
「生業がそこにありますから」
部下はそう答えた。
「そこから離れることはできないようですから」
「わかった」
伍子胥はそこまで聞くと表情を変えずに頷いた。だがその鋭い目の光がさらに鋭くなった。それはさながら獲物を狙う猛禽のそれであった。
「では今から行こう」
「今からですか」
「時は待ってはくれぬ」
伍子胥は冷徹な声で述べた。
「だからだ。よいな」
「わかりました。ではすぐに馬車を」
「うむ」
彼はすぐに屋敷を出た。そうして部下が報告したある場所に向かった。そこは川辺であった。
広い川だ。呉は南方にあり川が多い。その為水軍が発達もしている。
その川辺は青く澄んでいた。ただひたすら美しかった。青い水面に銀の光が跳ね返りそれが伍子胥の目にも入っていた。だが彼はその美しさには目を奪われてはいなかった。
「ここにおるのだな」
馬車から降りて川辺を見ていた。そのうえで後ろに控える部下に問うた。
「この辺りに」
「そうです」
忠実な部下はまた答えた。
「ここで漁師をしております」
「漁師か」
それを聞いてまた辺りを見回す。見れば小舟で出ている漁師が何人もいた。
「結構おるな」
「そうですね。その中で」
「むっ!?」
ここで伍子胥はあることに気付いた。
「あれは」
漁師の中の一人に奇妙な者を見つけたのだ。それがまず目に入った。
「変わった漁をしているな」
最初はそう思った。何とその漁師は網で魚を捕っていたのではないのだ。
[9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ