第5部 トリスタニアの休日
第4章 トリスタニアの休日
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閲覧、平民たちの生活を賄う市場などの取り締まりも行う。
その政策をめぐり、行政を行う王政府と対立することもしばしばであった。
アニエスに気付いたアンリエッタは、唇の端に微笑を浮かべ、リッシュモンに階段の打ち切りを伝えた。
「しかしですな、陛下……。これ以上税率を上げては、平民どもから怨嗟の声が上がりますぞ。乱となっては外国どころではありませんぞ」
「今は非常時です。国民には窮乏を強いることになりましょうが……」
「戦列艦五十隻の建造費!二万の傭兵!数十もの諸侯に配る一万五千の国軍兵の武装費!それらと同盟軍の将兵たちを食わせるための糧食費!どこからかき集めれば、このような金を調達できるのですかな?遠征軍の建設など、お諦め下され」
「アルビオン打倒は今やトリステインの国是」
「しかしですな、陛下。かつてハルケギニアの王たちは、幾度となく連合してアルビオンを攻めましたが……、そのたびに敗北を喫しています。空を越えて遠征することは、ご想像以上に難事なのですぞ」
リッシュモンは身振りを加えて大仰に言い放つ。
「知っておりますわ。しかし、これは我らがなさねばならぬこと。財務卿からは『これらの戦日の調達は不可能ではない』との報告が届いております。あなた方は以前のような贅沢が出来なくなるからって、ご不満なのでしょう?私のように率先して倹約に努めてはいかがかしら?」
アンリエッタは、リッシュモンが身に着けた豪華な衣装を見て皮肉な調子で言った。
「私は近衛の騎士に、杖を彩る銀の鎖飾りを禁止しました。上に立つものが模範を示さねばなりませぬ。貴族も平民も王家もありませぬ。今は団結の時なのです、リッシュモン殿」
アンリエッタはリッシュモンを見つめた。
リッシュモンは頭を掻いた。
「これは一本取られましたな。わかりました、陛下。しかしながら高等法院の参事官たちの大勢は、遠征軍の編成には賛成できかねる、という方向でまとまりつつあります。そこは現実としてご了承いただきたい」
「意見の調整は、枢機卿と私の仕事ですわ。私たちには法院の参事官たちを説得できる自信があるのです」
そう言い放つアンリエッタを一目見た後、頭を下げて、リッシュモンは退室の意向を告げた。
アンリエッタは頷く。
リッシュモンは、扉の前に立つアニエスを一顧だにせず、退出していった。
やっと順番が回ってきたアニエスは椅子に腰かけたアンリエッタの御前へまかり出ると、膝をついて一礼する。
「アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン、参上仕りました」
顔を上げるよう、アンリエッタが促す。
「調査はお済みになりまして?」
「はい」
アニエスは懐から書簡を取り出すと、アンリエッタへと捧げた。
それ
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