第5部 トリスタニアの休日
第4章 トリスタニアの休日
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いると、公言しているようなもの」
「はは。我らが親愛なる皇帝陛下は、卿の情報にいたく関心をよせられております。雲の上までお越しくだされば、勲章を授与するとの仰せです」
「アルビオンのおかたは、豪気ですな」
「まも、いずれこの国もその名前で呼ばれることになりましょう。あなたの協力のおかげで」
そういうと、商人風の男は立ち上がろうとした。
貴族の男は、それを引き留める。
「まだ何か?」
「なに、終劇はそろそろです。どうせなら最後まで見ていきましょう」
その頃、ウルキオラはゆっくりと目を開いた。
そして、誰にも聞き取れないような小言を発した。
「どこの世も争いか…」
そう発したあと、再度目を閉じた。
トリステイン王宮の通路の石床を、かつこつと長靴の響きを鳴らして歩く一人の女騎士の姿があった。
短く切った金髪の下、澄み切った青い目が泳ぐ。
ところどころ板金で保護された鎖帷子に身を包み、ユリの紋章が描かれたサーコートをその上に羽織っている。
その腰に下げられているのは……、杖ではなく、細く長い、剣であった。
行き交う貴族や親衛隊のメイジたちはすれ違いざまに立ち止まり、王宮で見かけることの少ないこの剣士のいでたちに目を丸くした。
メイジ達はそんな彼女の下げた剣や、着込んだ楔帷子を見てささやきあう。
「ふん!平民の女風情が!」
「あのような下賤ななりで宮廷を歩く許可を与えるなどとは……、いやはや時代は変わったものですな!」
「しかもあの粉ひき屋の女は新教徒という話ではないか!そんな害虫にシュヴァリエの称号を与えるなどと……、お若い陛下にも困ったものだ!」
彼女は自分の体に投げかけられるそんな無遠慮な視線や、聞えよがしの中傷などには一瞥もくれず、ただまっすぐに歩く。
通路の突き当り……、アンリエッタの執務室を目指して。
王家の紋章が描かれたドアの前に控えた、魔法衛士隊隊員の取次に、陛下への目通りの許可を伺う。
「陛下は今、階段の最中だ。改めて参られい」
女騎士を見下した態度を隠そうともせずに、魔法衛士隊の隊員は冷たく言い放った。
「アニエスが参ったとお伝えください。私は、いついかなる時でもご機嫌を伺える許可を陛下より頂いております」
隊員は苦い顔をした。
そしてドアを開け、執務室へと消える。
それから再びやってきて入室の許可をアニエスに伝えた。
アニエスが執務室に入ると、アンリエッタは高等法院のリッシュモンと会談を行っていた。
高等法院とは、王国の司法を司る機関である。
ここには特権階級の揉め事……、裁判が持ち込まれる。
劇場で行われる歌劇や文学作品などの
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