第十七話
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暴走体の行動には注意を欠かしていないが。
分かってはいたのだ。フェイトがプレシアに褒めてもらいたくて無茶をするのは。そう。分かっていたつもりだった。
(アニメだったから落ち着いて見ていられた!だが、知らないあいだに俺の命まで危険に晒されていたかと思うと・・・!!!)
葵の心中は大きく荒れていた。フェイトの現状は大体わかる。同情もするし助けてやりたいとも思う。だが、それと同時に腹立たしい。
自分は、魂をかけて戦う理由があるのだ。そのためならどんな犠牲を出そうと走り続けると決めたほどの。その信念に従って行動し、ようやく『階段』さえ昇った。目的に近づくための最初の一歩を踏み出したのだ。
だというのに、自分の意図しないところで死にかけていたというのである。これは、前世で通り魔に殺されるという理不尽な死を体験している葵にとって、最大のトラウマであった。
故に、当り散らす。子供のように叫んだ。また理不尽に死にかけていたという恐怖を、叫ぶことにより発散させるかのように。
「クッソ!とにかくテメエら手伝え!あの化物をどうにかするぞ。話はそれからだ!」
見ると、暴走体の体に突き刺さっていた街路樹は、度重なる叩きつけにより折れていた。そして、暴走体の体がジュクジュクと気持ちの悪い蠢き方をして、傷が治っていくと同時に体内に残った街路樹の欠片を押し出している。
(チッ。痛くて暴れてるのかと思ったが、街路樹を細かくして体から排除しやすいようにするためだったのか)
パラパラとその巨体から砕けた木の欠片が零れ落ちる。葵に向けているその瞳は怒りに満ちているが、ダメージ的に言えば殆ど効いているようには見えなかった。
『GAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!』
咆哮。小さき者が。己の餌に過ぎない下等な生物が良くも己に傷をつけたなと。完全に傷を修復し終えた暴走体が襲い来る。
フェイトもアルフも完全に無視して、一目散に葵だけに向かってきている。まるで、フェイトやアルフなど敵にすらならないと言っているようだし、事実そうなのだろう。フェイト達は、昨日この暴走体と戦って敗走していた。手も足も出ずに逃げ出したが、この暴走体が海鳴市に向かっているのを感知して追ってきたのである。
『GAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』
「このっ・・・!」
ものすごい勢いである。海岸から葵のいるビルの屋上まで、大体百メートルはあるのだが、そこまでビルを破壊しながら突き進んでいても、まだ全長が分からない。海から全身が出ていないのだ。一体どれほど巨大なのか想像も出来ない。
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