第23話
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ではないか、既に狂気が消えた彼等は武器を下げ始めた。もう一押し。もう一押しあれば彼等を降伏させることが出来る。
そして華琳は用意していた言葉を――
「華琳様!!」
「っ!?」
飛来する矢を見て夏侯惇が叫ぶ、矢は吸い込まれるように華琳の鎧を貫き肩に突き刺さった。
それを見て黄巾達は血の気が引く、矢は彼等の方角から飛んできたのだ。それも――自分達を助命しようとしてくれている人物にである。
「っ〜〜貴様等ぁぁ!」
「ヒッ!?」
華琳の安否を確認した夏侯惇が憤慨する。黄巾達を救おうとした敬愛する主が、その黄巾に負傷させられたのだ。無理も無い。
「大事無いわ、これは流れ矢よ……いいわね?」
「で、ですが華琳様」
「二度も言わせないでちょうだい……春蘭」
「……ハッ」
華琳の言葉に大人しく怒気を収める。その様子に皆が唖然とする中、肩に矢が刺さったままの彼女は息を深く吸い込み、まるで広宗全域に轟かせようとするように声を張り上げた。
「行く当ての無いものは私と共に来ると良い。貴方達を虐げる事は――『天』が許してもこの曹孟徳が許さない!」
『!?』
最後の言葉は黄巾達の脳に響いた。『天』この地に住む者達からすればそれは『天子』にあたる。今まで自分達を虐げてきた漢王朝そのものだ。彼女はそれを許さないと言った。
あくまで比喩表現で直接言ったわけではないが――漢王朝の意向よりも自分達を優先すると言ったのである。それも漢王朝の忠臣であるはずの太守がだ。
彼女の言葉を受け、黄巾達は手に持っていた武器を地面に落としだす。そして自然と跪き頭を垂れた。
「……」
華琳は己が策の成就に頬を緩める。そんな彼女と黄巾達とは対照的に、他諸侯は今にも曹操軍に襲い掛かりそうだった。彼女の言――抽象的であっても朝廷に対する侮辱に他ならない。
ここで黄巾ごと潰してしまえる大義名分が彼等には出来ていた。そしていくら曹操軍が精鋭だろうと正規軍の集まりには敵わない……たとえ黄巾と結託してもだ。
しかし彼等は攻撃の合図を出さない――否、出せなかった。彼等の目線は一様に袁紹、そして恋に注がれていた。
「あらら、そういうことですか〜、稟ちゃんもやってくれますね」
「ほう。何かに気付いたのですか? フフ」
遠目で様子を窺っていた風と郭嘉。笑顔で惚ける郭嘉に対して、風は不機嫌そうに目を細めた。
先ほど華琳の策に主が使われたのはまだ良い。解っていて使われたのだから、それは袁紹の意思に他ならない。だが――
「……む〜!」
知らない内に策に組み込まれているのでは話が別だ!
曹操軍には始めから張角の首に関心が無かった。弱小した賊
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