第十四夜「前を歩く者」
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やらなくてはならないとだけ思ったのだ。
「楓…。あの側溝の蓋を開いてみよう…。」
「あなた…?」
僕はそれだけ妻に言うと、直ぐ様布団から出て着替えを始めた。
妻は何が起こっているのか分からない様子で、暫しポカンと僕の行動を見ていた。
「あの側溝の蓋を開いて、一体何を探すつもりなの?」
「分からない。ただ…妙な一致じゃないか?昨日の体験といい…何かある…。」
僕はそう言うと、そのまま家を出たのだった。
歩いて暫くすると、後ろから声を掛けてくる人がいた。昨日とは違い、今度はしっかりと金子さんだと分かった。
尤も、声を掛けてきたのはお爺さんの方だったが…。
「森山さん。もしかして、あの側溝へ?」
「なぜそうだと?」
「いや…先程奥さんが息子と話とるのを聞きまして、もしやと思ったんです。あの事件の時、私は家の前で雪掻きをしとったんですが…犯人の姿すら見ることが出来なんだ…。今なら何か出来るかもと思いましてな…。いや、変な話をしましたな。迷惑でなかったら、ご一緒して宜しいですかな?」
金子さんの祖父は今年齢八十だと言うのに、口調も足取りもしっかりしていた。
「ええ、どうぞ…。」
そこで話を切ると、僕と金子さんは連れ立って、あの側溝まで向かったのだった。
昨日とは打って代わり、今日は快晴の青空。地にはうっすらと雪が残るものの、その殆んどは淡い水の流れとなっていた。
「実はですな…この事件で死んだのは、末の弟の娘でしてな…。」
「ええ…!?」
「いやいや…突然申し訳ない。しかし、時の流れは早いものだ…。結局犯人は捕まらず、今はただ、時効を待っとるだけとは…。」
「姪にあたる方だったんですか…。無念…だったのでしょう?」
「そうだねぇ…。私も昔のツテで新聞やら雑誌やらに情報提供を呼び掛けたが…全く、何の役にも立たなんだ…。世の中って奴ぁ上手く行かんもんだ…。」
「そう…だったんですか…。」
金子さんと話しているうちに、あの側溝まで辿り着いた。雪は殆んど溶け流れていたものの、微かに僕の足跡だけは残されていた。
それを見て僕は、金子さんに昨日の体験を話すことにした。どうしても話す必要があると感じたのだ。この老爺には知る権利があると…。
僕は全てを金子さんへと語った。初めは胡散臭いと言った顔をしていたが、最後には何か心当たりがあるようで、静かに溜め息を吐いて言ったのだった。
「そうか…。私はこの道を、無意識のうちに避けていたのかも知れんのぅ…。もしかしたら、君だったら気付いてもらえると思ったんかものぅ…。さて、開けてみるとするか。」
「そうですね…。」
何が出るかなど分からない。ただ、こうすることによって、何か変化するのではないかと思うのだ。それが何かなんてことは、まるで考えもしなかったが。単に「遣ら
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