適能者-シュウ-
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何べん言っても、いっつもいっつも無愛想でさ〜。それにクマさんカステラの作り方を教えたときは苦労させられたんだぜ。ハリスがどうしてもって言うから仕方なく教えたのによ…しょっぱなで鉄板にあるカステラ全部真っ黒にするか普通!?まっくろくろすけ製造機かと思ったぜ!」
ものすごい剣幕の尾白にたじろぎながらもここにはいないシュウをフォローしたが、最初は落ち着いた口調だったのだが、次第に尾白は離していくうちに興奮し始めて怒声に近いものになっていた。
「ま、まあまあ…でも気づいたらちゃんとうまくできるようになったからいいじゃん?仕事は黙ってなんでもこなしてくれてたしさ」
尾白の興奮は冷めないままだった。何か言いたことでもあるのかと憐が横目で尾白を見た。
「俺が言いたいのはそこじゃないんだよ…憐君…」
なぜか君付けで蓮を呼びながら顔を俯かせた尾白の身は、震え始めていた。そして、グワ!!!っと勢いよく顔を上げて叫んだ。
「俺が言いたいのは!!」
「い、言いたいのは?」
「なんで…」
「うん、『なんで』…その後は?」
「なんであの無愛想野郎が女性客からのウケがよかったんだよおおおおおおおお!!!!」
…………………。
あまりにも声がデカすぎて、今彼らの周りにいるレストランの来客たちが静まり返って尾白を何とも言えない視線で睨んでいた。特に女性客からの視線がものすごく痛い。
「お、尾白!声デカいって!とりあえずこっちで話聞くから…な?」
あまりにも痛覚に感じた憐は無理やり尾白の背中を押しながら、尾白と共にレストランの外に出た。
観覧車がちょうど池の向こうに見えるベンチに座り、尾白はとにかく隣に座る親友に文句をありったけ言いまくった。
「俺の方がトークがうまいし?それに子供たちへの面倒見だってあいつより圧倒的にいい!そしてさらに女性への笑顔+サービス精神だって忘れちゃいない!なのに…なのになんで!!どうして俺はモテないままであいつがモテまくってたんだよおおおおお!!!」
傍から聞くと、違う意味で哀れ過ぎる尾白の言い分。地球にいた頃、当の本人は無自覚で興味も抱いていなかったのだが、シュウはその容姿とクールな雰囲気から、実のところ女性客からモテていた。
「つまり、尾白は自分よりモテそうな奴が嫌いってことだろ?」
「な、何言ってんだよ!そんなわけ!!」
「そんなわけ?」
「……うん、そんなわけ、あるかもね…」
ない…そう言いたかったのだが、憐からどれだけ言いつくろっても無駄だと言いたげな視線を向けられ、尾白は自ら折れた。
「まあ、確かに女性客から噂されてはいたよな。その反面シュウって、恋愛とかあまり興味なさそうだったのにさ」
「馬鹿言うんじゃねえよ!?あいつ彼女がいただろ!ほら、あいつといつも一緒にいたあの………」
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