適能者-シュウ-
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ナイトレイダーAユニットに配属された黒崎修平です。よろしくお願いします』
初めて彼が配属された日のことを思い出した。静かに敬礼した彼の目を見たとき、凪はある違和感を覚えた。
シュウの目付きが、どこかで見たことがあるような形をしていた。一寸の光さえも届かないような、暗い闇だ。自分と同じかと一瞬思ったが、違う。自分のはビーストに対する憎しみが心の多くを占めていた。だが彼の場合は…
『隊長』
『?どうした、凪』
『私に、彼を鍛えさせてください』
凪は、その違和感を確かめるべく自ら彼の教官を勤めた。主に彼には格闘技を叩き込み、よく訓練スペースで二人、組み手をしたことも多かった。
組み手を通したり、詩織に担当させた射撃訓練を行っている彼を見ていると、自分とその周囲で起きたあの熾烈な戦いの中で出会った者たちの中で、特に彼女の中で今もなお忘れることができずに存在し続ける男の姿が浮かぶ。
自分がかつて尊敬した、副隊長である自分の前任者でもあった男。
強いと信じていたのに、力に溺れ闇に堕ちてしまった罪深き男。
自分の行いを悔い改め、生きて罪を償おうとしたその矢先に静かな眠りに着いた、あの男を…。
その度に凪は強く思った。
(彼のような存在を放っておくわけにはいかない…『溝呂木』の二の舞にはさせない…!!)
「まだ、見つからない?」
シュウの捜索難航の報は、相変わらず遊園地でアルバイトしている憐の元にも届いた。憐は携帯電話を持っていないので、遊園地のレストランの電話を借りて瑞生からの連絡を聞いていた。
『うん…全然足取りがつかめないから、見つかるのはもう絶望的だって』
「そっか…」
『ごめん…こんなことしか言えなくて』
憐がきっとがっかりしていると思い、瑞生も申し訳なく思って憐に謝った。対する憐は、あまり彼女に憂い顔を浮かべて惜しくないと思い、優しく言葉をかけた。
「いいよ、瑞生たちは頑張ったんだろ。だったら仕方ないさ」
『でも…!』
「わかってる。でも、瑞生たちには他にもやっておかないといけない仕事があるだろ?」
そう言われて、瑞生は少し電話の向こうで沈黙していたが、間を置いてから再び口を開いた。
『私、もっと頑張って探してみる。今度は見つかるかもしれないから』
「ああ、サンキュ、瑞生」
もう一度探してみると言ってくれた瑞生に感謝し、憐と瑞生の電話は底で切れた。
「見つかったって?」
バイト仲間の尾白が憐に尋ねたが、憐は見るからに残念そうな表情を浮かべて首を横に振った。
「…そっか…」
憐のこの顔を見て、尾白も臨んだ答えが帰ってこないことを悟った。ふと、彼は突き立てた箒に両手と顎を乗せて、シュウのことを思い出してみた。
「結局、あいつのことよくわかんないままだったよな。客には笑顔でって
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