適能者-シュウ-
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いたつもりだ」
「え…」
別れる覚悟を、していた?テファは信じられない、といった様子だった。
「俺の仕事は常に、生と死の境界線の上に立つものだし、自分の意思でそれを選んだ。その選択そのものに後悔はしていない。だから、俺の知り合いたちのことなど気にしなくていい」
そのときのシュウは、内心で自分のことを過小評価するような言葉を呟いていた。テファの気を遣ったつもりで言ったようにも聞こえるが、自分自身や、同時に故郷で待っている彼らに対して淡白ではないのか、とテファは思っていたが…すぐにそんなことはないだろうと考えた。そんな冷たい人だったのなら、危険を冒してまで盗賊に浚われた自分を助けたりしない。無愛想で冷たいように見えるけど、実はとても優しい人なのだ、と。
だが同時に、なぜか自分をわざと危険に追いやっているようにも思えてきた。
「…」
シュウは、言葉を撤回することは無かったが、一方で決して故郷の仲間たちを蔑ろにしたつもりで言ったわけではなかった。
(そう、ここは地球じゃない。帰ることはできない。だから、もうあいつらが俺のような男のことを心配する必要はないんだ…)
すると、テファはシュウの手を優しく包みながら言った。
「無理はしないで?私…自分でも勝手なのはわかるの。それでも、あなたとお友達でありたいって思ってる。だから、自分を追い込むようなことはしないで」
――――無茶はしないでね?
「…ッ…」
その言葉に、一瞬だけある思い出がシュウの頭の中を過ぎった。
「シュウ?」
「いや、なんでもない。それより……いつまで手を握ってるんだ?」
一瞬、シュウの顔に変化が見えた。よくわからなかったが、そんな気がしたテファはどうかしたのかと尋ねるが、彼はなんでもないと答えた。
「え?あ、ご!ごめんなさい!!」
腕をいつまでもぎゅっと握ったままだったことに気づき、テファは思わず慌てて手を放した。それに伴った顔も朱色に染まっている。
「お姉ちゃん、顔が赤くなってるよ?」
「お風邪?」
「な、なんでもないわ。なんでも…」
子供たちならまだしも、同年代の男の人と言葉を交わしたことがほとんど無かったテファにとって、男性の手を握るのは気恥ずかしかった。
「はは、姉ちゃんリンゴみてぇー!」
ジャックが指を差して笑うと、他の子供たちもまたおかしくなって腹を抱えて笑い出した。
「笑わないでよ!!んもう!」
思わずテファは、子供たち並に子供みたいな台詞を言ってそっぽを向いてしまった。
シュウは、そんな他愛のないやり取りを交わすテファや子供を見て、心が安らぐのを覚えた。
こんなひと時が、いつまでも続くことになれば、どれほど幸せだったことだろう。
だが自分はウルトラマンに選ばれた者、適能者(デュナミスト)だ。
選ばれし者には、変
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