適能者-シュウ-
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び怒鳴られると、シュウは彼の手を振りほどき、バイクの方に歩き出す。
「待てよ!どこへ行くんだ!逃げんのかよ!!」
あの鉄の塊が馬と同じようなものであることは知っている。もしや逃げるつもりかと疑い、シュウの服の後ろのすそを掴んで引き止める。すると、シュウはサムの方に視線を落とし、ただ一言彼に言った。
「放せ」
「ッ…」
たった一言なのに、その言葉と鉄仮面のような表情からのプレッシャーを感じ、サムは思わずたじろいで手を放した。
…いや、エマにはすぐわかった気がした。そうとしか思えなかった。
村で暮らし始めてからいつも表情を一つ変えてこなかったシュウが、その目に怒りの炎を宿していたことを。
「勘違いするな。俺が彼女を連れ戻してくる」
「え?」
呆けるバイクのキーを回し、バイクのエンジンを起動させ、進行方向に視線を向ける。
「ここから11時の方角…か」
まだ胸のルーンが光り続けている。さっきから奇妙な景色はまだ見えている。テファの姿だけは見えず、どこかへ向かっている馬車の中の光景が見える。周りには盗賊たちが下劣な笑みを浮かべながらこちらを見ている。おそらくこのヴィジョンは、テファのものだと確信した。
「サム。みんなを家の中に集めろ。決して外に出るな」
まだ呆けていたままのサムたちを残し、シュウは直ちにバイクを走らせた。
バイクを走らせている間も見えていた。身売りの商品としてテファを浚ってあざ笑う盗賊たちの姿が。時折、ヴィジョンが涙で濡れたかのように歪むことがある。視界を共有している彼女が泣いているせいだろうか。
そのとき、脳裏に別の光景を思い出した。
テファともまた違う、少女の顔を。それが自分の頭の中でモノクロに染まり、闇の中へと消えていく。
(…屑め)
生理的に、盗賊たちへの怒りを募らせながら、シュウはバイクを走らせ続けた。
夕刻から夜へ変わろうとしていた。闇が辺りを包み込み始めていた。闇の中を覗き込むと、わずかな明かりが、松明の炎が見えてきた。
いた!シュウはバイクの速度を維持しながら、パルスブレイガーをガンモードに切り替えた。そして銃口を、テファに向けていやらしく手を伸ばす盗賊の一人に向け、引き金を引いた。あらかじめ仕込ませておいた、麻酔弾は男の首筋に直撃し、テファの服を破りつけようとした男の意識を奪い取った。
「なんだてめえは!!」
(さて…)
思い知らせるか。俺を怒らせたらどうなるかを。そう決意し、シュウはバイクを乗り捨てて、テファを取り戻すべく目の前のケダモノたちと対峙した。それからまもなくして、盗賊たちはたった一人の若者によって鎮圧されてしまったのだった。
(副隊長と平木隊員にしごかれた甲斐があったな)
地球で自分を鍛えてくれた二人の先輩たちに、シュウは心から感謝を述べたくなった。それにしても、魔法使
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