適能者-シュウ-
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住人として暮らすことになる。
ここに憐や孤門がいた方が良かったような気がした。シュウ一人だと、どうしても他人との間に壁を作りがちになってしまう。本人もそれを自覚していた。村で暮らし始めてから、子供たちの警戒心と言う名の視線が突き刺さり続けていたが。彼はその視線を黙って浴び続けていた。自分もあの子たちと同じ立場に立たされたのなら同じ反応を示していたと重々承知していた。それに子供たちには、結果として他所者を無理やり連れてきてしまったテファとマチルダのように、人の人生を担ぐ相応の責任を背負えるほど大人ではないから、シュウの存在を疎ましく思ったりするのもやむを得ない。それでもシュウはこれといって文句を言わず、洗濯や掃除、巻き割りなどをこなしていった。
ナイトレイダーの仕事がないという点については、比較的穏やかな日々だった。
時に買い物に行くことも任された。今までは村の近くを行商人が近くを通りかかったところを村に戻っている期間中のマチルダが、またはテファが帽子で耳を隠しながら直接買い物をしていたり、どうしてもと言う場合は、本来村の外に出るべきじゃないテファ、または子供たちの中でも年長者であるサムが近くの町に出かけるような、危険な状態にあった。
そんな中、盗賊家業による稼ぎに出かけているマチルダ以外で戦闘経験を持つシュウの存在は大きかった。とはいえ、まだこの時点でハルケギニアの文字が読めない彼に異世界での買い物は難しく、最初はエマを同伴させた。
「ひゃ!」
ぶかぶかではあったが、顎紐をきつめに締めたヘルメットを被って彼の後ろに座らされたエマは悲鳴をシュウの背中にしがみついた。慣れない速度の移動に驚いてしまったようだ。
「手は離すなよ」
なるべく速度を落としつつ、シュウはエマに言う。速度を落としたとはいえ、それでも馬よりも速い速度で街に直行、到着した。とはいえ、このバイクは目立つ。街の近くの茂みの中に隠し、鍵をかけた。その頃には、エマはすっかり縮こまっていた。流石にきつかったかと思いながら、シュウはエマにかぶせていたヘルメットを外す。もしかして乗り物酔いか?シュウはとにかく背中をさすりながらエマを落ち着かせる。
「大丈夫か?」
「うぅ…うん」
「まずは、町で水も買うか?」
「うん」
「乗れ」
どの道文字が読めない自分が一人買い物に向かっても、この状態のエマを放置することはできない。ひとまず買い物は後に回し、エマの体調の回復が先としたシュウは身をかがめ、背中を向ける。少し緊張気味に彼の背に乗ったエマは、シュウの背中の温かさを肌で感じた。背中もなんだか大きく感じる。エマはまだ幼い孤児だから父や兄に負ぶってもらってるような感覚を覚えた。
「…重くない?」
「問題ない。軽すぎるくらいだ。さ、行くぞ」
シュウはそう言うと、エマを背負ったまま街のほう
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