暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikers〜誰が為に槍は振るわれる〜
第一章 夢追い人
第6話 恋と日本文化と戦いと
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と必死にフェイトは考える。
 家族のスキンシップも使った。エリオ自身の攻略はそもそもできていない。上司と部下のコミュニケーション? それは向こうも同じだ。すぐに思いつく口実は全て出し尽くし、そして?―潰された。

 完全に手詰まりだ。

「どうやら納得してもらえたようですね〜フェイトさん」

 話しはこれでおしまいと笑顔を浮かべるラディ。
 悔しさに奥歯を噛みしめながらも、引き攣りそうになる顔の筋肉を意地で抑え込み、なんとか表面上は笑顔を取り繕いながら、フェイトはそうだねとだけ返した。
 そんなフェイトの胸中を知ってか知らずか、馴れ馴れしくエリオと肩を組みながら、口元から輝く白い歯を覗かせながら、声音に宿る嬉しさを隠すこともせずに宣言した。

「それじゃあエリオはオレがもらっていきますね〜♪」
「う、ん。どう…ぞ」

 意気揚々とエリオの背中を押しながら男風呂へと向かうラディの背中を、がっくりと肩を落としながら、フェイトは恨めしさ半分、羨ましさ半分の複雑な視線で見送った。
 当人たちからしてみればとても重要だった今回のライトニング分隊の内部紛争は、ライトニング分隊新人副隊長のラディの勝利で終わった。
 しかし、目元に涙を微かに浮かべ、唇を噛みしめながら二人を見送るフェイトの様子に、これからライトニング分隊は荒れるだろうな〜と、その場の一同は苦笑いを浮かべるのであった。
 

○●○●○●○●○●○


 僕はさっきから驚いてばかりいる。

 魔法がないにも関わらず、ミッドとさほど変わらない文化基準に。
 “銭湯”というミッドにはない文化に。
 そして?―ラディ陸曹の身体に刻まれたいくつもの傷跡に。

 大きな傷、小さな傷、斬り傷に銃痕に火傷に、そもそもどうやってできたのか分からないような傷。そういった傷が、肩や太腿はもちろん、胸やお腹のような命に関わるようなところにまであった。
 ラディ陸曹は、たぶん他のお客さんに遠慮したんだろうけど、すぐに傷跡を変身魔法かなにかで消してしまった。けれど、あまりにも衝撃が強すぎたそのいくつもの傷跡を、忘れることはできなかった。
 壁に背中を預けて温かいお湯に肩までつかりながら、気の抜けた声をだしてくつろぐこの人が、新しい仲間で、頼るべき上司であるこの人が、僕にはなんだか怖い人に思えて仕方なかった。

「エ〜リオ〜」
「?―は、はい。なんですか?」 
「いやぁ、なんだかずいぶん固くなってるようだからさぁ、ちょっと声かけてみただけだよ〜」
「そ、そうですか……」

 そんなことを考えていたせいで、いきなりのラディ陸曹の呼びかけにびっくりして、変な声がでてしまう。
 でもラディ陸曹は気づかなかったのか気にしなかったのか、緩んだ顔で手を振っただけだった。

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