3部分:第三章
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いる護衛の者達に声をかけたのだ。
「あの壁塗りを連れて来い」
「壁塗りをですか」
「そうだ。気になる」
鋭い顔と声で護衛の者達に告げた。
「あの男。只者ではないでしょう」
「何故そう思われるのですか?」
「気配だ」
「気配ですか」
「そうだ。・・・・・・それに」
ここで彼のところに。何かの香りが漂ってきた。それは梅の香りだった。
「この香りもな。気になる」
「だからですね」
「左様。すぐにわしの前に連れて来るのだ。よいな」
「わかりました」
こうして護衛の者達は豫譲に声をかけた。豫譲はこの時一瞬顔を強張らせたがすぐに観念した顔になった。そのうえで彼等に両手を捕まれ縄で縛られた後で趙の前に引き立てられたのであった。
「我が君、連れて来ました」
「御苦労。そしてだ」
趙は彼等をねぎらったうえであらためて彼等に問うた。
「何かおかしなものはなかったか」
「まずはこれです」
最初に出されたのは匕首であった。
「ふむ、それか」
「そしてこれです」
次に出されたのは梅の枝であった。白い梅の花がその枝に咲いている。
「この二つです」
「梅か」
趙はその梅の花を見てすぐにあることを思い出したのだった。
「そういえば智伯が梅を好んでいたな」
「その通り」
豫譲は縛られ趙の前に跪けさせられていた。しかしその表情も態度も堂々としたものであり悪びれることもなく卑屈になることもなく彼に言ったのだった。
「我が名は豫譲」
「豫譲か」
「左様。御存知か」
「知っておる」
趙はその豫譲に顔を向けて答えた。
「智伯の下にいた説客の一人だな」
「その通り」
「剣の使い手と聞いていたが。生きていたか」
「生き延びていたのだ」
豫譲の言葉はこうであった。
「貴殿を討つ為に」
「敵討ちか」
「そうだと言えばどうされるか」
今度は豫譲から問うのだった。やはり悪びれてはいない。
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