第十三夜「花火」
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―ズドンッ!!―
花火ではない、鈍い破裂音が響いた。
驚いて振り向くと、美雪の浴衣が血に染り…倒れゆくところだった。
少しずつ、まるでスローモーションのように見えた…。
それは…誰もが目を疑うような光景だった…。
そして…
―ドサッ…!―
美雪が完全に倒れると、明美ちゃんと弥生ちゃんが同時に悲鳴を上げた!
僕は直ぐに、倒れた美雪に駆け寄って抱き起こしたが、美雪の目は虚ろになっていて、胸からは止めどなく鮮血が溢れ出ていた。
「誰かっ!誰か救急車を!早くっ!!」
順平と友仁は大声で周囲に呼び掛け、何人もの人たちが救急や警察などに通報してくれたようだ。
僕はと言えば、美雪を抱いて、ただ呆然としながら「しっかりしろ!死んじゃダメだっ!」と、そう言い続けるしかなかった…。
僕には、この流れ続ける鮮血を止める術も、下がり続ける体温をどうする術もなかった…。
「なぜだ!なんでこんなことになったんだっ!誰だよっ!誰がやったんだよっ!!」
順平は、手当たり次第に人々に食って掛かっていた。
「きみ、少し落ち着いてくれ!わしらにだって分からんのだ!救急車は直に来るから…」
しかし、見れば分かるだろうと思う。彼女はもう助からないと…。
僕は自分のシャツを脱いで、少しでも流血を止めようと傷口に押し当ててはいたが、とてもそんなものでは止められなかった。シャツは見る間にに紅く染まり、そこから新たな流れを作っているのだから…。
「しっかりするんだ!死ぬんじゃない!もうすぐ救急車が来るからな!生きるんだ!生きなきゃダメだっ!」
そんな僕の叫びを嘲笑うように、打ち上げ続けられている花火は、夜空に大輪の花を咲かせている。
「淳…キレイ…花火……淳…好き…ず…と…」
「バカ、喋るなっ!お前は生きるんだ!また花火を見るんだよ!僕と一緒に見にきてくれるだろ?来年もその次も、ずっとずっと!」
「見た…い…はな…び…き…れい…じゅ…ん……す…き……」
それが美雪の最期の言葉となった。
「美雪…?美雪っ!ああ、死んじゃダメだっ!寝ちゃダメだよ!ああ!なんでだよっ!なんでなんだっ!」
僕の叫びに、周囲は美雪の死を悟ったようだった。
「嘘、だよな?何かの間違いだろ…?なぁ?嘘なんだろ?」
順平が虚ろな目で美雪を見つめて呟いた。
「オレ、まだ何も言ってねぇよ…。嘘だって言ってくれよ。いつもみたく冗談だって言ってくれよ!美雪ィ!」
そんな順平を、友仁が押さえ付けた。
「順平っ!静かにしてやれ!美雪のヤツは今な、花火見てんだよ!煩くしたらどやされっぞ!」
そう言う友仁の瞳からは、大粒の涙が零れていた。
二人の女の子は、屋台のおばさん達に保護されて、離れたところで泣きじゃくって
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