暁 〜小説投稿サイト〜
幻影想夜
第十三夜「花火」
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子には逆らえません。」
 そう言って順平は土手を降り始めたため、みんなも後に続いて下に降りた。
 夜空では、色とりどりの花火が次々と咲き乱れ、土手の上では多くの人が歓声を上げている。
 それほどではないが、下の方にもかなりの見物客が集まってる。いくつかの屋台も立ち並んでいるため、そこは終日満員御礼の勢いで、休んでいる間もないようだった。
 僕達は何とか座る場所を確保して、一応落ち着いた。
 そんなとこに美雪が沁々っ言った。
「ほんと、お祭騒ぎって…こういうことを言うのねぇ。」
 そんな風に疲れたように言うもんだから、みんなしてついつい吹き出してしまった。
「美雪ィ〜、オレ達まだ十代だぜ?なにババむさいこと言ってんの!」
 美雪のこめかみがピクッとした。
「順平…後であんたの食料、全部魚の餌にしてやるから…。」
「あぅっ!それだけはご勘弁下さいっ!」
「あ、入れ物はちゃんと返してあげるから、心配しないでね。」
「イヤ〜ッ!エコですか?自然に優しいんですかっ!?」
 こんな漫才をみんなで笑い、轟きながら咲き続ける花火を楽しんでいたんだ。

―あぁ、これがいつまでも続いたらいいなぁ…。―

 なぜかそんなことを思った。
 それもそうだろう。もう、みんなでそろうことなんてないだろうから…。
 高校生活も後半年程で終わりだし、卒業したらみんなバラバラな路へ進む。だからきっと、こんな風に考えてしまうのかも知れない。

―ドーンッ!―

 花火の弾けた刹那、妙に明るく美雪の顔が照らし出された。

―この一瞬が、永遠であってほしい…。―

 口には出せないが、世間で言うところの“恋愛感情”ではない。ただ、楽しそうに眺めている彼女が、ちょっと綺麗だったんだ。家族の写真を残したいと思うのと、多分同じ心境だね。
「私、飲み物買ってくるね。無くなっちゃったから。」
 明美ちゃんがそう言って席を立つ。すると美雪も立ち上がって言った。
「じゃ、私も一緒に行くわ。いつ行こうかなって思ってたのよ。」
 その手にはカラの紙コップがあった。
「みんなは何か飲み物いる?」
 そうと美雪が聞くや否や、まず順平から口を開いた。
「オレ、コーラ買ってきてほし〜。」
 続いて友仁と弥生ちゃん。
「俺はウーロン買ってきて。」
「私はお茶だったら何でもいいから、お願いするわ。」
 と、それぞれが言ったので、僕は、「じゃ、僕も一緒に行くよ。」と言って席を立った。
「よいしょっと。」
「淳、ジジ臭いって…!」
 美雪がそう言うと、みんなして僕を見て笑った。ほんとに失礼なヤツらだ!明美ちゃんまで笑ってるし…。
「あっ!ほら、枝下柳よっ!」
 美雪の言葉で僕が空を見上げると、しなやかに垂れてゆく花火が輝いていた。
 その刹那…
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