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幻影想夜
第十三夜「花火」
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ぇっ!
 と、思いはするものの…順平のヤツは僕の心なぞお構いなしに、爽やかな笑顔を撒き散らしながら駆けて来た。

―これで町中は…当分歩けない…。―

 僕は溜め息をついた…。
「遅かったじゃね〜か!これだけ目立つようにしといて、分かんなかったんか?」
「いや、嫌味なくらい目立つよ…。」
 これで僕も苦笑い組の仲間入りだ!向うでは、友仁が“お前も同類だ!”的にニタリと笑ってやがる!
「じゃ、そろったとこで行くか。まずは屋台で何か買ってこうぜっ!」
 一人張り切ってる順平を余所に、僕は女の子に見入ってしまった。
 三人は申し合わせたように浴衣姿だったからだ。

―可愛過ぎる…来て良かったかも。手にキャラクター入りのカラフルバルーンが無かったら、もっと良かった…。―

 正直な話し、彼女達も順平に向って青い炎をちらつかせてたが、それは置いておくことにしよう。
 僕らはまず、屋台の多い境内へ入った。風船は邪魔(ハッキリ言って恥ずかしい)なので、そこらの木に結び付けた。
「やっぱ屋台と言ったらリンゴ飴っしょ?」
 とか訳の分からん自説を言っては、あちこちの屋台を駆けずり回っている順平を、僕は羨ましいと思うことがある。羞恥心が無いということは幸せだ。
「淳くんは何か買わないの?」
 明美ちゃんが言ってきた。
「ああ、後で買うよ。順平のヤツいつも買い過ぎるから、大体はヤツのおこぼれで間に合うからな。」
 僕が率直にそう言うと、明美ちゃんは可笑しそうにそれに返した。
「そうなんだ。順平くんて少し変わったとこあるけど、何か憎めない人よね?あの風船は、ちょっとどうかな?って思ったけど。」
「そうだよな?あいつときたら、いつも俺たちを巻き込んでは一人で騒ぎまくってんもんなぁ。」
 そんな会話の中、友仁カップルも加わってきた。その後ろには、苦笑いを浮かべた美雪がいた。
 美雪は、薄い色の朝顔の柄の浴衣を着て、手には同じ柄の扇子を持っている。そこへ藍の帯を絞めているため、それが映えて引き締まって見える。

―美雪らしいな。―

 彼女はかなりボーイッシュな女性だ。スポーツ好きで、髪はショート。ロングにしたとこは見たことがないな。でもそれが、彼女の顔をより一層目立たせてるのかも知れない。
 友仁達は三人で、屋台を飛び回っている順平を見て笑い合っているので、僕は美雪のとこにきた。
「よっ!なんか久しぶりだよな?学校の方はどう?」
「まぁ、ボチボチって感じかな?女子ばっかりのミッションスクールだから、別にこれと言って話題になるようなものもないしねぇ。そっちはどうなの?彼女出来た?」
 ニタリッと笑って、美雪が聞いてきた。一番痛いとこを分かってて突いてくるのが、美雪の悪い癖だ。
「出来る訳ないだろうが。男子校だぞ?どこに
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