8部分:第八章
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べた。
「若し崩れても敵兵を退けて修復を続けなさい」
「それで宜しいのですね」
「充分過ぎる程に」
そしてまたこう述べてきた。
「濠が大丈夫なうちは」
そう言って濠を見た。見ればそこにチェーザレの軍勢が近付いてきていた。
「御覧なさい、無駄な努力をする者達を」
カテリーナは城壁の上から彼等を見下ろして家臣達に言った。
「彼等は結局は敗れ去り諦めることになるのです」
「それはどうかな」
この言葉は指揮を執るチェーザレの耳にも入っていた。彼はそれを聞いても余裕の笑みを浮かべていた。
「橋がないのなら作ってしまえばいい」
彼は言った。
「それだけのことだ。兵士達に命じよ」
「はっ」
将校達がそれに応える。
「濠に薪の束を投げ込んでいけとな。それが済み次第後方に下がれ」
「わかりました。薪束を濠に投げ込め!」
チェーザレの命令が伝えられる。
「そして濠を埋めてしまえ。よいな!」
「はっ!」
「そこの上に船を乗せる」
ジェーザレはまた言ってきた。
「それで橋にせよ。よいな」
「御意」
既に船が容易されていた。小舟だがそれで充分であった。濠は見る見るうちに薪で埋められていきそして遂には船が置かれた。カテリーナはそれを見て呆然としてしまっていた。
「な・・・・・・」
「流石にこれは思い付かなかったようだな」
チェーザレは城壁の上で呆気に取られている彼女を見て呟いた。
「だがこれで勝負ありだ。よいか」
「はっ」
「そのまま城壁を破壊せよ。それが終わり次第次の行動に移る」
「その次とは」
「決まっている」
その陰のある笑みに何かを楽しむものを含ませて答えてきた。
「総攻撃だ。よいな」
「わかりました。それでは」
「うむ」
彼はそこまで言うとまた街に戻った。そして持ち場をボイコットしていたフランス軍の隊長達を集めた。そのうえで優雅にこう述べたのであった。
「火曜日だ」
「火曜日に?」
「そうだ、全ては終わる。そして」
またあの何かを楽しむ笑みを浮かべてきた。そのうえでの言葉であった。
「火曜日には伯爵夫人は私のものだ。見ていてくれたまえ」
「火曜日ですか」
「そうだ、それだけだ」
そう言い伝えただけであった。だがそれがフランス軍を釣った。彼等はその言葉に恩賞を見出して戦いに復帰してきたのだ・全てはチェーザレの思惑次第であった。
「まさかこの様な方法があったとは」
完全に埋められ舟まで置かれた濠を見てカテリーナの家臣達は途方に暮れていた。
「城壁ももう」
「修復不能ですか」
「はい」
カテリーナにそう報告した。
「残念ながら」
「わかりました」
彼女はそれでもまだ肩を落としてはいなかった。毅然として報告を受けていた。
「それではそれで
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