14.カツオブシは誰がために
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出来る筈の事が出来ない。ああ、せめてあと少し身長があれば、と悔やまずにはいられないだろう。
疲れたようにペタリとへたりこんだ少女は恨めしげに箱に向かって抗議する。
「はひゃぁ……ぜ、全然届かなにゃい!この店はネコの気持ちが分かってにゃいにゃ!小さき存在への思いやりというものがにゃいのかにゃ!?こ、これだからファミリアの外は嫌いにゃ!!」
「……つかぬ事を聞くが、レディ」
「にゃ、何にゃ!?ミネットは今、この上にあるカツオブシを手に入れるために……!」
「俺の目が正しいのなら、店の隅に高い場所の商品を取る為の台座が置いてある筈なのだが……?」
「それがにゃんだって言う…………にゃにぃっ!?」
リングアベルがぴっと指さした先には、年季の入った木製のみかん箱が貫録すら感じさせる存在感で鎮座していた。まるで「ほら、困ってるんだろ?使えよ……」と語りかけてきそうなほどのイケメン(木箱)に、ミネットはしばしの間呆然とした後、ガックリと膝をついた。
「み、ミネットの頑張りは………ミネットの汗と苦労の日々は、いったい何だったのにゃぁぁぁーーーーーッ!!ふにゃぁ〜〜〜〜ッ!!!」
たかが店の隅にある箱一つに気付けなかったというそれだけで、彼女はどれほどの時間を無駄にしてしまったのだろう。その慟哭には己の無力さへの悔恨がひしひしと伝わる悲痛な物だった。
蹲って号泣する少女――ミネットの姿に、リングアベルも流石に居た堪れなくなる。
しかもその辛さを乗り越えた所で、彼女にはもう一つの悲劇が待っているのだ。
「あー………それともう一つ。そのカツオブシの箱、既にからっぽみたいだぞ?」
「にゃ………にゃ?にゃにゃにゃ…………にゃぁぁぁ〜〜〜〜ッ!?そ、そんにゃ筈は!!確かにここからカツオブシの香ばしい匂いがするにゃ!!値札のところにもカツオブシって書いてあるにゃ!!ある筈……ある筈にゃんだにゃぁぁ〜〜〜ッ!!」
涙を流しながら値札をペシペシ叩いて必死に主張するミネット。
彼女は今の今までここに求めるものがあると信じていたのだ。実際に見もせずにそんなことを言われても、到底受け入れられる筈がない。否、受け入れる以前に認めたくない。
しかし悲しいかな、彼女の身長をゆうに越えるリングアベルの目には箱の中にある「SOLD OUT」の立札が良く見えていた。言うまでもなく、中はからっぽで兵どもが夢の後とばかりに若干のカツオブシの残り香がするだけだ。
「その匂いは入れ物の箱自体に匂いが移った所為だろう………残念ながら、売り切れのようだ」
「………………―――」
あまりのショックに、ミネットはぐらりと揺れ――そのまま卒倒してしまった。
幸いなのは彼女の背中にある大きなチェシャ猫の
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