第202話 妖精は再び―――――。
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―クロッカスの街 南側―
ガン!と鈍い音が辺りに響く。
キィン!と金属同士がぶつかり合う、無機質な音が辺りに響く。
エ「はァアアアアア!」
威勢の声を発しながら、エルザは妖刀・紅桜を目の前にいる敵―――――“極悪の悪魔”アンファミーの頭上に振り下ろした。妖刀・紅桜の白銀の刀身に映ったアンファミーの口元が弧を描いたのと同時に、刀身はアンファミーの指先の中にあった。
エ「くっ・・!」
エルザは刀を持つ両手に力を籠めるが、刀は悪魔の指先の中でピクリとも動かない。
アンファ「せぃヤァ!」
エ「うわァアアア!」
指先で弾く時のような手つきで、アンファミーはエルザを遥か彼方に弾き飛ばした。エルザのボロボロの身体は瓦礫の中に突っ込み、砂煙を巻き上げた。
悲鳴を上げる体の痛みに耐えながら、刀を杖代わりに立ち上がろうとするエルザの目に最初に映ったのは、固く握り締められた自分の身体よりも大きな悪魔の拳だった。
アンファ「せぃやァアアア!」
エ「ぐァアアアアアアアアアアアア!」
瓦礫に、地面に、悪魔の拳の下敷きになったエルザの身体がめり込む。バギ!ボギ!と鈍くて嫌な音が数回、同時にした。
アンファ「ハッハッハッハッハーッ!どーやら何箇所か骨が折れたようだね。これでアンタはもう動けないよっ。大人しく、奈落のどん底に堕ちちまいなァ!」
口から鋭利な刃物のような牙と、濃い紫色をした長い舌を覗かせながらアンファミーは狂ったように、高らかに叫んだ。
アンファミーが言うとおり、エルザは左腕と右足の骨を折っていた。あんな拳をまともに食らったというのに、これだけで済んだのは奇跡、とも言えるだろう。それでも動く事はもちろん、その場に立ち上がる事も出来ない。
エ「・・・くっ!・・・っぁあ!」
身体がもう限度を超えていた。じっとしててもエルザの身体は悲鳴を上げっぱなしだった。
アンファ「“妖精は悪魔には勝てない!”その事を肝に銘じるんだよ!」
エルザの身体をすっぽり包み込むように、アンファミーの巨大な足の黒い影が地面に映る。
エ「(ここまでか・・・!)」
覚悟を決めたエルザは右手に妖刀・紅桜の柄をしっかりと握り、ギュッ!と目を固く閉じた。
アンファ「死ねェエエエエエエエエエエエエエエエ!」
黒い影はどんどんエルザのボロボロの身体に迫り、どんどん大きくなり、エルザの頭上スレスレの位置まで届いた―――――その時だった。
「流星!」
―――――刹那、淡々とした、だがよく通る声が聞こえた。それと同時に、
アンファ「ぐあっ!」
アンファミーが顔を歪ませながらバランスを崩し、エルザを踏み潰
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