第二百十六話 慶次と闇その一
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第二百十六話 慶次と闇
織田家は家全体で政に専念していた、しかし。
それは全ての者が入ってはいなかった、慶次と可児はというと。
安土において政には全く入らず日々槍や刀、馬ばかりして後は酒に博打にと遊んでばかりだった。それはこの日もだった。
二人で茶屋の中で酒を飲みつつだ、楽しく話していた。
可児は慶次にだ、大盃で酒を飲みつつ慶次に問うた。
「慶次殿、最近どうじゃ」
「最近でござるか」
「うむ、飲んでおられるか」
「この通りじゃ」
実際にだ、慶次も大盃が手にある。それで飲みつつ言うのだった。
「飲んでいるぞ」
「それは何より」
「いやいや、暫くは政とのことじゃが」
「我等に政はな」
「全く縁がござらぬ」
それで、というのだ。
「こうしてじゃ」
「飲むだけじゃな」
「左様、酒に博打に」
「後は女じゃ」
「そして若衆」
「茶も歌もあるが」
「舞もな」
しかしだった、その中に政はなくだ。彼等は風流に過ごしていた。遊びにしても二人のそれは風流であった。
その風流の中でだ、慶次はこんなことも言った。
「しかし近頃」
「叔父上がじゃな」
「いや、叔父御が」
彼の叔父である前田利家がというのだ。
「近頃いい加政のことも備えよと」
「口五月蝿いと」
「それもかなり」
「ははは、それはわしもよく言われる」
「才蔵殿もか」
「左様、周りからのう」
政に入れと五月蝿く言われるというのだ。
「何かとな」
「ははは、お互いに厄介な事情でござるな」
「いやいや、こうしたことは」
「聞き流せばいい」
「所詮我等は武辺者」
それ故にというのだ。
「政には向かぬ」
「それで、でござるな」
「槍一筋、それに生きればよい」
「政をすればその手柄で石高も上がりますが」
「我等は今で充分」
「石高については」
それについても話す二人だった、多くの者が血眼になって何とかして増やそうとしているそれについてもだ。
「そちらの欲もなく」
「戦になれば槍を振るい」
「戦でない時はこうして遊ぶ」
「我等はそれで結構」
「それが不便者というもの」
「まさに我等天下の大不便者」
「全く以て」
二人で笑いながら酒を飲み歌や踊りを見つつ楽しんでいた、だがその宴の最中にだ。茶屋にある者が来てだった。
その女達と遊び惚ける二人にだ、怒った顔で言った。
「また御主達は」
「おお、これは平手殿」
「平手殿ではありませぬか」
二人は酒を飲み女達と遊ぶのを止めて彼に顔を向けて言った。
「暫くお会いしませんでしたが」
「お元気そうで何より」
「いやいや、背筋もしっかりとしておられて」
「意気軒昂なう様ですな」
「全く、戦がないとこうじ
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