巻ノ四 海野六郎その十四
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「あの方ならばと思うからこそ」
「伊賀にいることを幸せにすら思います」
「わしもじゃ。百地様もおられたが」
しかしというのだ。
「半蔵様にお誘いを受けたのは天の配剤じゃ」
「その百地殿の行方はわかりませぬが」
「織田様の伊賀攻めの後は」
「ご無事でしょうか」
「あの方はそう簡単に死ぬ方ではない、しかし元々家をまとめられる気のある方ではない」
それが百地というのだ。
「仙人の様な方で弟子もあまり取られぬしな」
「ですな、孤高で」
「お一人だけ先を行かれる様な」
「そうした方ですな」
「そうした方じゃ、悪い方では決してないが」
しかしというのだ。
「半蔵様とはまた違う」
「はい、人を惹きつけるものはおありでも」
「半蔵様とはまた違うものですな」
「そこがです」
「どうも違いますな」
「そうじゃ、それでまた幸村殿のことを言うが」
ここで前置きをしてだ、牛鬼は周りの者達にあらためて幸村のことを話した。
「あの御仁、只の武士ではない。忍の術も心得ておる」
「それは双刀殿や雷獣殿も仰っていました」
「幻翁殿も」
「そうであろう、若しや徳川家にとって厄介な敵になるだけでなく」
「徳川に仕える我等にとっても」
「厄介な敵になりますか」
「忍としてもな」
そうなるのではというのだ。
「そんな気もする、敵にならぬことを祈る」
「徳川に引き込めればいいですが」
「そのことも考えねばなりませぬか」
男達も言うのだった、そしてだった。
牛鬼は男達と別れそのうえで西に向かった、相撲の場では幸村は清海と土俵の上で向かい合っていた。それが決勝だった。
巻ノ四 完
2015・5・1
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