5部分:第五章
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い」
チェーザレはミケロットのその言葉を受けてこう述べた。
「それもまた君主なのだからな」
「左様ですか」
「それは御前もわかっていると思うが」
ミケロットを見てこう問うてきた。
「それはどうなのだ」
「確かに」
ミケロットもそれを認めてきた。
「その通りです」
「ふむ」
チェーザレはそれを聞いてまずは頷いてみせた。
「他の者がどう思っているのかはいいのだ。ただ」
「ただ?」
「私は私の道を行くだけだ」
冷たささえ感じられる言葉であった。冷徹と言うべき。
「それだけだ。だが民達もまた私の宝」
その心は変わらない。
「イタリアなのだからな。それだけだ」
「宝ですか」
「そうだ」
チェーザレははっきりと言い切った。
「宝を手にするのが私の夢なのだ。イタリアという宝をな」
「それではその為には」
「悪魔にでもなろう」
口の端だけで笑った。しかしそれは一瞬ですぐに表情が消えた。
「それだけだ」
「わかりました」
ミケロットは彼のその言葉に対して頷いてきた。
「まずはこれでイモーラは陥落し」
「次はフォルリだ」
目標は決まっていた。
「フォルリに対しても同じだ」
チェーザレは言った。
「わかったな」
「はっ」
ミケロットはその言葉に頭を垂れた。イモーラの城塞も僅か二週間の篭城で陥落してしまいチェーザレはいよいよカテリーナのいるフォルリへと向かうのであった。
チェーザレのその大軍がフォルリまで来たのは暫くしてからであった。カテリーナはそれを聞くとすぐに自らフォルリの街に向かった。そして有力者達に問い掛けた。
「今ここにヴァレンティーノ公爵の軍が来ています」
彼女はまずこう言った。
「私は彼と戦います。よいですね」
「奥方様」
だが彼等はその言葉に対していい顔は見せはしなかった。
「何でしょうか」
それを察したカテリーナは曇った顔で彼等に問うてきた。
「ここはもう」
「イモーラも陥落しましたし」
「戯言を」
皆に全ては言わせなかった。
「それでは貴方達は御自由に」
「といいますと」
「下るも何も好きにすればいいでしょう」
最早彼等の心が降伏しかないとあっては言っても無駄であった。カテリーナも諦めるしかなかったのであった。それが彼女にとって好ましくない判断であったとしてもだ。
「貴方達には剣はないのですから」
今まではそう思って民のことは考えなかった。彼女はあくまで剣を持つ存在でありそのこと以外に思いを馳せることはなかったからだ。剣を持つ女、それ以外の何者でもなかったからだ。
「それでは我々は」
「ええ、どうぞ」
あらためて彼等に言い伝えた。
「ヴァレンティーの公爵に下れば宜しいでしょう」
「それでは」
「お許しを」
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