2部分:第二章
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めてその命を奪う、それがカテリーナ=スフォルツァという女だったのだ。
これで彼女の復讐が終わったのではなかった。彼女は暗殺者の一族までも捕らえさせた。そして怒りに燃える顔をそのままにしてこう言ったのであった。
「仇の血、この世から絶やすのです」
と。こうして僅か十日でこの事件に連座して四十名の者が惨たらしい方法で処刑されていった。当時の欧州は多分に血生臭い世界であったがカテリーナのそれは特筆するに値するものであった。敵は何処までも憎み、愛は何処までも追い掛ける。それがカテリーナではあった。
「素晴らしい女だと思わないかね」
チェーザレはまずはカテリーナの実家であるミラノを陥落させていた。それから今カテリーナの下へ向かっているのである。その途中で彼は部下達に対してこう述べていた。
「美しいだけではない」
銀の杯に紅のワインをたたえていた。それを眺めながらの言葉であった。
「強い女だ。私はそうした女が好きだ」
銀の冷たさを感じながらの言葉であった。杯のワインが鮮血の赤をそこに映し出していた。今彼は部下達と共に宿舎にしている城の広間にいた。そこで酒を楽しんでいたのである。
「だからだ」
彼は言う。
「彼女を何としても手に入れる」
「何としてもですか」
「そうだ」
部下の一人の言葉に悠然として応えた。
「フォルリとイモーラもな。全て手に入れる」
「それはまた」
茶色の髪の口髭の男がそれに笑ってきた。
「公爵のいつもの悪い癖が出られたようですな」
「ほう」
チェーザレはその言葉に別の笑みを返してきた。
「何が言いたいのだ、リカルドよ」
「全てのものを欲する。悪い癖ですな」
「また妙なことを言う」
チェーザレの笑みはその言葉を楽しむ笑みであった。彼はそうした言葉を自分への賛辞と受け止めていたのである。
「私が全てを欲するのはだ」
「はい」
その男リカルドはそれに応えた。
「それを愛するからだ」
「愛されているのですか」
「そうあ、イタリアも勝利も」
その言葉には美しい響きと共に悪魔的な哄笑も感じられた。不思議な言葉であった。
「そして美女も」
「その全てを」
「愛している。その為には手段を選ぶつもりはない」
「左様ですか」
「そうだ。手段を選ぶのは愚か者だ」
チェーザレは言う。
「大切なのは結果だ。違うか」
「いえ」
リカルドもそれは否定しない。
「その通りです」
「ならばよい」
ここで否定していたらおそらく命が危ないであろう。リカルドもそれがわかってチェーザレの側にいるのである。
チェーザレは冷酷非情な男として知られていた。こういう話がある。
彼の弟にホワンという者がいた。美男子であり父である教皇から最も愛され教会軍総司令官の地位とガンディア
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