第22話
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見張り達は冷静に動いた――と言うより慣れに近い。
主に見張りをまかされている自分達は非戦闘員だ。後は駆けつけた仲間に任せて後方に下がれば良い。広宗に来てから何度もやって来た単純作業。今日もそのはずだった――
「だ、誰もいねぇ!?」
城壁の淵から下に知らせようとした男の声を聞くまでは
「おいどうした!」
「じょ、城門の見張りがいないだよ!」
「ば、馬鹿な……」
いくら何でも見張りが居なくなるなんてありえない。この広宗において城門は兵糧庫と同等の重要拠点なのだから――そこまで考えて見張りの男は血の気が引く感覚に陥った。
兵糧庫付近の火災、見張りのいない城門、砂塵と共に近づいてくる騎馬隊――男は確信した。
「か、官軍だああぁぁ!! 官軍が門から押し寄せてくるぞおおお!!」
「か、官軍だああぁぁ!! 官軍が門から押し寄せてくるぞおおお!!」
その知らせは兵糧庫の火災を消化して、警笛の音で城門に向かっていた黄巾達に届いた。
「ありえん……門番達はどうしたのだ?」
「あ、あれ! 門が開いてる!?」
遠めで確認して悲鳴のような声を上げる。もしも広宗内に進軍されたらと思うと――、黄巾達は一斉に走り出し門へと向かった。
「く……、一人入ってきやがった」
「女一人だ! さっさと片付けて門を閉めるぞ!!」
官軍の隊列から飛び出し一人門を潜る武将が一人、燃え盛る炎を連想させるような赤毛、袁紹軍所属、呂奉先の姿がそこにあった。
「…………へ?」
彼女に殺到した黄巾たちの一人が素っ頓狂な声を上げる。斬りかかった十数人の姿が一瞬にして『消えた』のだ。
そして後方で音がしたので振り向くと――
「ヒ、ヒィーーーー!?」
物言わぬ彼等がそこにあ・っ・た・。
一閃――ただそれだけで彼等は吹き飛ばされ、痛みを感じる間も無く息の根を止められたのである。
「さすがだな恋……ここは任せるぞ!」
「……ん」
恋の後に続いて広宗に辿り着いた星は、彼女の武力に黄巾達が恐れ硬直している内に、広宗の脇道へと入っていった。
「うああああ!? は、離れろおおお!!」
恋を見て叫び声を上げるこの男、黄巾ではなく他諸侯の兵士だ。
袁紹軍が内部に進撃しているのを確認した彼等は、便乗するように広宗に殺到した。そして入り口付近で黙々と黄巾達をなで斬りにする彼女の姿に叫び声を上げた。
恋の得物が速過ぎて視認出来ない。彼女が数歩前に出るたびに風切り音が聞こえ、次の瞬間には十数人の黄巾達が吹き飛ばされていく――彼女の周りには元黄巾達の変わり果てた姿が転がっていた。
「……なんと言う」
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