第22話
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いつまでも自分を頭呼びにしている部下を叱り飛ばそうとしていると、いつになく慌てた態度だったため部下が指し示す方角に目をやる、すると――
「な、なんだありゃあ……」
広宗にある兵糧庫付近から黒煙が上がっているのが確認できた。
「おい兵糧はどうした!? 無事なんだろうな!!」
「へ、へい、幸い兵糧には火が移ってないです……が」
「なんだ……どうした?」
「火の勢いが強くて……このままだと……」
「馬鹿野郎! それをはやく言いやがれ!!……寝ている連中を叩き起こせ。
門の見張りも消火活動にあたらせろ」
「へ? 見張りはどうするんで?」
部下が疑問に思う。自分達黄巾は確かに数では官軍に勝る。しかし錬度という点ではまったく適わない。
そのため地の利を得ている現在が理想の形、それを脅かす可能性は作りたくないと、小心者でなくても至る考えだったが――
「大丈夫だって言ってるだろ馬鹿が! いいから行動しろ!!」
「ヒッ、わかりました……」
一喝して部下を動かす。その懸念はこの『張角』にもあったが、今はそれどころではない。
自分達が地の利を得ていられるのは単に、潤沢な兵糧があるから成せるのだ。それを無くしてしまえば長期戦は不利、窮地に追いたたされるかもしれなかった。
警備は問題ない。仮に門番達を全て消化活動に当たらせたとしても、城壁には沢山の見張りが配置されている。
官軍の攻撃があればすぐに警笛で知らせるはずだ。第一、日はまだ昇っていない。官軍達がいつもの攻城に出るまで時間があった。
「冥琳様の狙い通り、見張りが少なくなりましたね!」
「ああ……馬鹿な連中だ」
城門から見張り達の殆どが兵糧庫に向かって行くのを、建物の影から甘寧と周泰の両名がほくそ笑みながら見ていた。
彼女達は広宗に潜入してから、火の不始末に見せかけ幾度も小火騒ぎを起こしていた。日がまだ昇りきらない明朝であるのも相まって、間者の仕業だと疑う者はいなかった……
「いくぞ明命!」
「はい!」
そして僅かに残った見張り数人を難なく黙らせる。彼等は悲鳴を上げることも出来ずに息を引き取った。
「ん? おい、あれ……」
「砂塵?――まさか」
城壁の見張りが異変に気が付いたのは事が起きた少しあとだった。薄暗い大地に砂塵が出来ている。
「騎馬……騎馬隊だぁぁぁ!?」
気付いた見張りがそう叫ぶも他の面々は首を傾げた。それもそのはず。明朝に攻撃を仕掛けてきたのは初めてたが、それ以上に篭城している自分達に対して騎馬で挑むとは――
「警笛を鳴らせ。一応下の見張りにも伝えておけ」
「下にはオラがいくだよ」
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