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女傑
11部分:第十一章
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使わなくてもよい」
「左様ですか」
「そうだ。ではな」
 話を終わらせてきた。家臣もそれに応えた。
「下がれ。そして勝利の美酒でも楽しめ」
「わかりました。それでは」
「うむ」
 こうして話は完全に終わった。彼は話が終わると奥に下がった。そしてその足である部屋に向かうのであった。
 そこに入るとカテリーナがいた。既に鎧は脱ぎ身を清めていた。美しいドレスさえ身に纏っていた。
「あらためてはじめして」
 チェーザレは部屋に入るとまずは彼女に一礼してきた。やはり優雅な、舞踏会でのダンスを誘うような礼でであった。実に洗練されたものである。
「お休みになられましたかな」
「はい」
 カテリーナはその言葉に頷いてみせた。見ればその顔からはもう疲れはなかった。
「お陰で」
「さて、戦いは終わりました」
 チェーザレは扉を閉めてから彼女にこう言ってきた。鍵が閉まりその鉄の音が部屋の中に響いた。
「そして城は陥落しました」
「ええ」
 カテリーナはまた頷いた。
「私の負けですね」
「そうです」
 チェーザレはその言葉を聞いてその整った顔に笑みを浮かべてきた。
「おわかりだと思いますが」
「これまでのお話ですね」
「そうです。そしてここにいるのは二人だけ」
 彼はそれをあえて言ってきた。
「私と貴女だけです」
「では望みを果たされに参られたのですね」
「その通りです」
 優雅に笑って応えてきた。
「それでは宜しいですね」
「今の私は敗れた身」
 カテリーナはそうチェーザレに返してきた。
「それは認めましょう」
「そしてあの言葉も」
「はい、それもまた」
 彼女は認めると言った。だがそれでも悠然と立ってチェーザレを見ていた。そこには戦場にあったのと全く同じ覇気が見られた。
「話が早い。それでは」
 チェーザレはここでテーブルの上に置かれているグラスを手に取った。そのグラスに赤いワインを注ぎ込む。それからそのワインを飲み干してきいた。
「ですが」
 しかしカテリーナはここで言ってきた。
「私は相手が誰であろうと誰かの手に落ちる者ではありません」
「ほう」
 そのグラスを微かに動かしてその言葉に応えてきた。
「面白いことを仰る。ここでですか」
「そうです。何処であっても」
 そう言葉を返す。
「誰であっても」
「貴女に勝った男を目の前にして」
「そう、私は誰の手の中にも落ちはしません。ですが」
「ですが?」
 チェーザレはその言葉に顔を向けさせた。そのままじっとカテリーナを見やる。
「私が選ぶなら話は別です」
「ほう」
「ワインを頂けますか?」
 カテリーナはチェーザレにあらためて言ってきた。
「まずは一杯」
「まずはですか」
「はい」
 カテリーナはそれに頷く。

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