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BloodTeaHOUSE
発表会
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なものを使う必要がないだけだよ」

かわいいって言われてうれしいけど、少し恥ずかしい。

「出演はそろそろかい?」
「んっとね、ちょっと進行が遅れてるから、たぶん後30分くらいしたら、だと思う」
訪ねてくる飛白に答えながら、それまでに髪の毛もなんとかしなきゃと頭に手を伸ばす。

「楽譜は持ってきてる?」
「うん。おさらいしようと思ってたんだけど、緊張しちゃってそれどころじゃなかったよ」

てへへっと笑いながら、雑誌を片付けて髪を下ろす。
長くて多いから重たくて、まとめるのは大変だけど、うねった癖がついてるから
このまま舞台には上がれないからなんとかしなきゃ。

「こっちは店で聞いたことがなかったね」
2冊置いてある楽譜のうちの1冊を取り上げて、飛白は中を見てる。

「ふふっ、サプライズってことで、ゆるしてね?」
「素敵なサプライズだよ」
楽しそう飛白の声音に、がんばらなきゃって思いながら髪を梳かしていく。

「なら、楽譜でも読んでいてくれるかい?」
「でも、髪の毛‥‥」
「そっちは僕の担当。使っていいものを貸してくれるかな」

ブラシをやんわりと取られて、楽譜を渡される。
ほんとは美容師さんでも苦労するんだけど、飛白になら任せてもいいって思えて、
革包から用意してきた道具たちを取り出して説明する。

「えっと、これがいつも使ってる櫛で、椿油の瓶はこれで、これが簪。
 ヘアゴムは細いのしかないけど、好きな長さに切って使えるやつだから。
 あ、これ、ハサミね。……あと、どうしてもまとまらない時はこれ…ジェルだけど…」

…――できればジェルはホントに、”どうにもならない時の”、最終手段にして欲しい――…

「ごめんね、ドライヤーとか…そゆの使わないから、持ってきてなくって‥‥」
「大丈夫だよ。ホラ、楽譜に集中して」
「う、うん!」

今日演奏するのは ”G線上のアリア” と ”愛の挨拶”
楽譜から音のつながりを導き出して、指と腕の動きをおさらいしていく。
どっちもたくさん練習した大好きな曲。

楽譜の中の旋律にどんどん心が集中して埋没してゆく‥‥
ぽんと肩を叩かれて、はっと顔を上げ、振り向こうとして、鏡の中の自分が目に入る。

「うわぁ〜!お花だ!キレイ〜♪」

サイドからの三つ編みで、高くアップにされた髪に毛には、
可愛い生花がたくさん散りばめられているし、コンパクトにかわいくまとまってる。
かすみ草が白いレースみたいに見えるし、ピンクのガーベラがバランス良く飾られていて、
とても素人がやったようには見えない出来だ。

「お気に召しましたか?」
「うん!すごく可愛いね。その‥‥大変だったんじゃない?」
「とんでもない。きれいな髪を触らせてもらえて、
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