第二食
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。誰からも求められていないのに、誰からも望まれていないのに、誰からも見捨てられているのに、どうしてそんなまじめに料理へ取り組めるのだろう。
自分は見捨てられるのが嫌だから神の舌に縋っているのに、君は怖くないのか? 誰からも必要とされず生きていくのは怖くないのか?
拙い料理だったが、神の舌は確かに読み取った。あの料理は彼の全身全霊が詰め込まれていた。熱意があった。食べる者への配慮があった。まずかったけれど、心を動かす何かがあった。
自我を見失いつつあるえりなにとって、誰からも必要とされていないはずのなおとに熱い感情があることが不思議だった。
そして、それが堪らなく羨ましかった。
えりなの質問をどう受け取ったのか解らないが、なおとは恥ずかしそうに頭の後ろを掻いて、答えた。
「それが僕の生きがいだから」
「……!」
「これを聞いたらえりな様は笑っちゃうだろうけど……、僕の夢はおじ様に認められるような料理人になることなんだ」
同じ家の者なのに明確な格別を教育されているなおとは、容姿相応の無邪気さと無垢さで目を輝かせて言った。
いつか、全員を見返してやるんだと。今まで自分に見向きもしなかった人たち全員を振り向かせてみせるんだと。
なおとの意気込みを目の当たりにしたえりなは何にも反応することが出来ず、失礼しましたと断りを入れて退出していくなおとの姿を呆然と見送ることしか出来なかった。
その時、えりなの机の端に置かれている紙切れが、小さく揺らめいた。
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