第二食
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、さながら高級レストランのウェイターのように上品にえりなの前に料理を置く。
「プレーンオムレツです」
この一言で雰囲気はぶち壊されたが、非常に幼いなおとに高級料理を作らせるのは酷というもの。むしろこの年で料理を出来るのは絶賛されるべきなのだろう。だが、残念なことに彼のいる家は食の権化とも言える薙切家、これぐらい出来なくては文字通り生きていけないのである。
湯気を上げて食べられるのを待つオムレツを、えりなはじっと見つめる。
オムレツとは、玉子を割って溶き、塩・胡椒などで味付けをし、バターや油をひいたフライパンで手早く焼いた代表的な卵料理だ。多くは木の葉型で中央が丸く盛り上がった形をしている。食材も作り方も非常に単純で、家庭でも簡単に、かつ短時間で作る事が出来る。このため、特に朝食のメニューとしてたいへん親しまれ、世界中どこの国でも普遍的に作られている。
しかし、逆に言えばオムレツとは卵料理の源泉。焦がすことなく仕上がりを美しく、ふんわりとした仕上がりを得るためには、フライパンの使い方、バターの量、火加減の調節などの基本的な調理作業に高い技術が必要となるため、プロの調理人がこれら基本技術の習得のためにオムレツを焼くという事も多い。
基礎ゆえの難しさ。調理人としての入り口とも言える料理。この少年はそういう料理を作ってきたのだ。
仙左衛門からなおとを文句の付けようの無い料理人へ導くように頼まれている以上、ただ味を評価するだけではだめだ。基礎の料理を出したからには、料理として基本的な審査項目は厳しめに付けていかなくては。
まず見た目。料理はただ美味しければ良いというものではない。どんなに美味しい物だろうと見た目がグロテスクなものだと食欲は失われてしまうだろう。特にオムレツは卵特有の柔軟さと弾力、そして輝かしい黄金によって万人に好まれている料理。わずかな焦げでも付いているのなら論外だ。
だが先ほど言ったように、なおとの作ったオムレツの見た目に問題は無い。むしろその魅力を引き立てるかのように掛けられているトマトケチャップが手をスプーンに伸ばせと訴えて掛けているようだ。
次いで匂い。こちらも言わずもがな見た目と同じ理由として重要な項目だが、オムレツに限った話ではなく他の料理にも言えることで、完成した料理の匂いである程度のクオリティを推し量ることが出来る。今回の場合、鼻腔を擽るような甘みが引き立っていれば、暫定的に十分な空気を含ませられていることが解るし、使用したバターの多寡も解る。
こちらは少々甘ったるい。自然の恵みによる甘さではなく、人工的な甘さ。おそらく調理途中で使用した砂糖の分量に狂いがあったのだろう。この時点で自分の舌が心配になってくる。
最後に味だ。具材を何も入れずに卵
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