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幻影想夜
第十二夜「前奏曲」
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 月の見えない夜、ここでは数え切れない星々が瞬いている。
 初夏の陽気に衣替えした季節に、多少心が弛む高校生活。そんな寝呆けたような毎日に、私の幼なじみの浩司が言ってきた。
「あのさ、星見に行かない?」
 彼はロマンチストな一面があり、たまに不可思議なことを言い出す。でも普通、こういうのって女の子から言い出すことなんじゃないかなぁ?
「星、ねぇ…。別にいいけど、どこに見に行くって言うの?」
 私が質問すると、乗ってきた私に嬉しいらしく、彼の顔が綻んでた。
「あのさ、この学校の裏山に、すっげぇ良く見える場所があるんだ!きっと驚くぞ?」
 こ〜んな不思議くんじゃなかったら、すごくモテると思うんだけどねぇ…勿体ないなぁ…とか、頬杖つきながら考える。

 私は夏樹 翠。今年高校に入ったばかりの新入生だ。 今ここで延々と星がどれ程美しく見えるのかを語っているのは、さっきも話したけど幼なじみの山村 浩司。幼稚園からの腐れ縁で、高校も一緒になった。
 でも彼は、こんな不思議くんなんだけど成績優秀なのよ?なんでこんなレベルの低い高校受けたかは謎。
 彼曰く、「少しくらい暇な方がいい」らしい。私にはちょっと理解出来ないわね。なにも3つもランク下げなくても良かったんじゃないのかなぁ…。
「…でね、三等星なんかもよっく見えるだ!星座を観察したいんだったら、絶対お薦めの場所だよ?ねぇ、少しは行ってみたくなっただろ?」
 ゴメン…途中聞いてなかったわ…。
「そうねぇ、一回くらい見てみたいわね。そんなに力説されちゃ…。」
 そんな私を見て浩司は「じゃあ、次の土曜に行こう?」って言うので、それで了承したはいいが…。
 ここは放課後の美術室。ほんとは部活時間なのよね…作品も仕上げずに、のんべんだらりと話してる私達(浩司が殆どだけど)を、顧問の先生が鋭い眼光で睨んでる…!
「…ねぇ、浩司。あんた出展作仕上がったの?」
 悪寒が走ったので、心配になって聞いてみたが、浩司は何食わぬ顔で返してきた。
「え?もう終わってるよ?翠はまだなの?」
「……。」
 私は何を言ってるのかしら?こいつは何でも出来るイヤな男だって忘れてたわ。
 私が小二でピアノを習い始めると、浩司も習いたいって入ってきたはいいけど、私がバイエルをやっと終える頃には、ショパンを優雅に弾きこなしていたわ。私はそれでピアノを辞めたのよね…。その後、書道教室に通い始めたらまたも後に続き、私が罵詈雑言を吐かれているときに、浩司は県大会で優秀賞を取っていた。ので、またしても辞めたわ…。珠算、英会話にお花や琴にまで着いてきては、私が辞める結果となった…。

―嫌がらせだったのかしら?―

 そう思ったこともあったけど、浩司にそんな芸当出来っこないわよねぇ…。じゃなくて、私がそうされる
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