4部分:第四章
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相違ないな」
「はい」
左慈は答えた。
「それでは何故仙人は術を使えるのだ。今までそなたは私に色々と見せてくれたが」
「修業の成果でございます」
「修業のか」
「ええ。それがなければ今こうしてできはしません。それは何でも同じことです」
「確かにな。それでは学問と同じか」
「そういうことになります」
彼はそれにはそう返答した。
「何も難しく考えられることはないのです。明公も修業を積まれれば私と同じ仙人になれますぞ」
「それは前に申したな」
曹操は微笑んでそう言った。
「はい。ですからお誘いしたのですが」
「生憎だが」
その時とはうって変わって落ち着いた声でそう言った。
「どうも私は仙人にはなりたくはない。気持ちは有り難いがな」
「そうでしょうな」
左慈はそれを当然のことであるように受け止めていた。
「明公はこの世に留まられるべき方です」
「そなたもそう思うか」
「はい」
左慈はここでにこりと笑った。
「それはもうわかっておりました」
「では何故ここまで私をからかったのだ。冗談にしても程があるぞ」
「ははは」
左慈は笑った。
「ほんのたわむれでございます。今まで色々と回りましたが」
「江南や荊州にも行っていたようだな」
「はい。そこも巡り明公と御会い致しました。いやはや、面白かったですぞ」
「許都がか、それとも私がか」
「明公がでございます。貴方は詩がお好きですな」
「うむ」
曹操は頷いた。
「それではお願いがあります。私のことを詠んで頂きたいのです」
「まさかと思うが」
左慈はそれを聞いて問うた。
「それを私に頼みにここまで来たのかな」
「左様」
左慈は頷いた。
「宜しければ明公のご子息にも詠んで頂きたいのですが」
「贅沢な奴だ。そなたは贅沢とは無縁ではないのか」
「詩は別ですから」
「わかった。それでは詠もう。これ」
彼はここで側にいる者に声をかけた。
「筆と木簡を。あと丕と植を呼んで参れ」
「わかりました」
それを受けて筆と木簡が持って来られた。そして曹操の二人の息子達も呼ばれた。彼等も父と同じく文才に恵まれていた。とりわけ曹植は当代きっての詩の天才と謳われているのである。
「それでははじめるぞ」
曹操は左慈に対して問うた。
「どうぞ」
左慈はそう答えた。そして三人は詩を朗し、それを書きはじめた。それを聞く鶴の上の左慈もその下にいる五百人の左慈もそれを聞いて恍惚とした顔になった。
詩が終わった。そして曹操はそれを一人の左慈に手渡させた。二人の息子のものもである。そして鶴に乗る彼に問うた。
「これでどうだ」
「有り難うございます」
彼は笑顔でそれに答えた。満足しているようであった。
「これでよいな」
「はい。心おき
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