3部分:第三章
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出来る人物であった。だからこそ天下の大半を手中に収めることができたのである。
「放っておきましょう。どうせあの男は悪戯をするだけですから」
「そうだな」
曹操はそれに頷いた。それでこの話を終わらせるつもりであった。ところがそうはいかなかったのだ。何とこの場にあの男が姿を現わしたのだ。
「そういうわけではありませぬぞ」
「貴様か」
曹操は部屋に突如として入って来た左慈を睨みつけて言った。怒りを忘れようとしていたその顔に再び怒りの色が満ちてきた。
「一体何をしに来たのだ」
「明公にお話したいことがありまして」
「話とな」
「はい」
左慈はいつもの微笑みを浮かべてそれに頷いた。
「明公は仙人になれる素養がおありです」
「ほう」
曹操はそれを聞いて怒りに満ちた顔を微かにほころばせた。
「そうなのか」
「はい。その御顔を見ますと。それで今日は提案したことがありましてこちらに参りました」
「提案とな」
「そうです。宜しいでしょうか」
「うむ」
曹操はそれを認めた。
「何でもよい。申してみよ」
「わかりました。それでは私と一緒に山へ登りましょう」
「山に!?」
「はい」
左慈は答えた。
「山にです。そして仙人になりましょうぞ」
「その気持ちは有り難いがな」
曹操は苦笑いをしてそれに応えた。
「生憎私にはまだその考えはない。悪いがな」
「左様ですか」
「うむ。気持ちだけ取っておこう」
「残念なことです。それでは私は無理にでも明公に山に来て頂かなくてはなりません」
「どういうことじゃ」
「はい。これで以ってです」
彼はここで懐から剣を取り出した。皆それを見て身構える。曹操の前を夏侯惇と曹操の従兄弟である曹洪が護る。二人共曹操の腹心中の腹心であり曹操軍に重鎮でもある。言うならば曹操の懐刀だ。
「益州の劉皇叔に天下を譲られてはどうですかな」
「馬鹿なことを」
曹操はまた怒りを爆発させた。彼は柄に手をあてて席から立った。
「何故私があのような男に天下を譲らなければならないのだ」
「それが天の理であるからでございます」
左慈はそれっとしてそう答えた。
「明公が仙人になられて劉備様が天下を治められるのは。そうは思いませぬか」
「思わぬ」
曹操は即答した。
「悪ふざけも大概にするがよい」
「おやおや」
「夏候淳、曹洪」
曹操は脇を固める二人に声をかけた。
「この者を切り捨てよ、よいな」
「はっ」
「畏まりました」
二人はそれを受けて切り掛かる。だが左慈はそれより前に部屋から姿を消した。まるで煙の様に姿を消してしまったのである。
「ぬうう、またしても消えたか」
曹操はそれを見てさらに怒りを爆発させた。
「今度ばかりは許してはおけぬ。追ってすぐに殺してしま
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